本当の作品に対する興奮

 完成度が高すぎるものに対する、感動のような、高揚感のようなものの正体というか、それが誘発される条件を探りたいと思っている。ある程度、人間に共通する性質だと思うので。

 色々な話を聞いて思ったのは、単に完成度が高いだけではなく、その中に新規性が必要という考えだ。

 

 単純に完成度が高いだけの作品というものがある。非の打ち所がないというような作品だ。しかし、誰の心にも引っかからないような。理性的に素晴らしいと判断する作品と言える。

 逆に、新規性は高いが、完成度はイマイチ、という作品もある。加点法で言えば1億点だが、減点法で言えば負の値を取る、というような。

 そのどちらに対しても、このような興奮は発生しないと経験上、感じる。

 

 おそらく、完成度が高いということは既存の法則というか、理論にしっかりと則ったものが生まれているということなのだと思う。それに対して、人々は安心を覚えるし、感心もするのだが、心は動かない。なぜならば、既知のものであり、気を惹きつけるものではなく、記憶しておく必要がないからだ。

 新規性が高いということは、今までの作品から得られた法則を超越しているのだと思う。しかし、完成度が低い、つまり、既存の法則に従っている部分が少ないと、それは例外として扱われてしまい、気を惹きつけることはできるものの、真に感動を呼び起こすようなことはないのではないか。

 その両者を兼ね備えいている、すなわち、法則に従っているように思えるのに、その法則から導き出されないはずの何かが生まれている、と感じると、自身の法則、価値観のようなものがひっくり返されるような気がして、それに強く惹きつけられ、感動のような高揚感のようなものを覚えるのではないか。なぜならば、その価値観や法則の更新といったものが、人間をここまでの繁栄に導いてきたからだ。最近は、このように考えている。