評価基準とそれを利用した分析

 ある作品を観た時に、どの程度の完成度なのか、どの程度面白いものなのか、というのは結構人によって変わると思うのだけれど、僕と妻はそのラインがかなり近いんですよね。片方だけが、この作品は面白いと思っているけれど、片方がつまらないと思っているということは、少なくとも記憶の範囲内ではなくて。もちろん、微妙な好みの違いはあるので、片方が比較的問題ないのに、片方的には許せないということはあるのだけれど、基本的な評価ラインがほぼ等しい。

 だから、2人で話していると、そのラインが2人のラインであるにも関わらず、最も客観的な視点であると思えてきちゃうんですよね。これは危険なことなので、なるべく客観的な点を挙げて、こういう理由で面白かった/つまらなかったというのを分析するようにはしているのだけれど、それも、後付けと言えば後付けだからなぁ。

 たぶん、僕と妻が感知できない軸というのがいくつかあって、その軸において優れている場合、僕たちにとって駄作なのに人気が出る。これは分析しようがないので、仕方がないのだけれど、感知できる軸においては、どうして、その位置なのか、どうして、面白くないのか、どうやったら面白くなるのか、を常に考えるようにはしている。これは別になんということもなく、それ自体が娯楽になっているからなのだけれど。

 その作品が偶然の産物なのか、確固たる法則/理念に基づいて創られた面白い作品なのか、というのを簡単に見分けるには、その作者の他の作品群を観ればよい。ほぼ全て(制作にはあらゆるファクターがあるので、基本的に全てとはいかないだろう)の作品で面白いのであれば、法則を理解している作者、代表作が3作未満のような監督の作品は偶然の産物である。前者を分析するのが最も楽で、効果があると感じている。後者の場合、法則に基づいたものではないので、ノイズを拾ってしまう可能性が高めだ。