ないものねだり
創作とは、物語を創るとは、面白くするとは、端的に言ってしまえば、時間軸を動かすことであると思う。バラバラにする、ループさせる、戻させる、遅らせる、平行に走らせる、或いは単にカットする。組み合わせも考えれば、バリエーションは無数にあって、未だに消費されきってはいないだろう。ほとんどの創作では、カットする、ずらす(回想など)ぐらいしか、有効に使用されていないから。
僕がクリストファー・ノーラン作品を非常に好んでいる理由の一つもそれだ。彼の作品では、時間軸が様々な様相を呈し、柔軟に変化する。しかし、わかりにくくはならない。エンターテイメントのためにそれが存在する。そのバランス感覚が大好きで、彼の作品は何度も観てしまう。変幻自在な時間軸は、それだけで物語をどうしようもなく面白くさせる。
だからこそ、この人生はどうしようもなく退屈だ。どうやったって、時間軸は動かせない。いや、だからこそ、僕が物語の面白さの根幹に、時間軸を持ち出しているのだろうな。毎日、空の色が曜日ごとに変わる世界の住民は、そのことに飽きてしまう。僕はどこでどんな生活をしていても、きっと、ここではないどこかを求めているのだろう。