価値観

 「スター・ウォーズ」の展示会に行ってきた。各種の貴重な資料と共に、自分の出自や性格を選んでいくことで、最終的にはスター・ウォーズ世界における自分を創り出すことが出来るという特別展示だった。

 その時、最後の方の選択に、価値観という項目があった。約10項目から自身の価値観に最も近いものを選ぶのだ。例えば、博愛や伝統、好奇心や快楽、権力と様々な内容となっており、僕はそれを選んでいく人々を観察していた。この展示では展示パネルの該当する発光箇所に自分のリストバンドを近づけることで選択をするので、それを外から確認することが出来るのだ。

 大抵の場合、面白いように推測できる価値観を選んでいく。例えば、普通の優しそうな女性なら、ほとんどが博愛を選ぶ。本当かよ、と何度もツッコんだけれど。少し悪ぶっている(ファッションで判断)子持ちの男性は全て好奇心。真面目そうなサラリーマンは伝統。おとなしめの男の子も伝統だった。赤ちゃんを抱えた気の強そうなヤンママが権力を選んでいるところを観て、夫に憐憫の視線を向けることもあれば、地味そうな女性が快楽を選んでいたりすると、エロ漫画か? とか思いながら観ていた。

 そして、妻の番が来た。僕が選んだ価値観は、よくわからない格好をしたおじさんが選んだぐらいで人気がなかったので、それではないんだろうな……と思っていた。しかし、彼女は各価値観を吟味した後、僕と同じ自己選択という価値観を選んだ。

 そう、それしかないのだ。好奇心を満たすために冒険が与えられようと、快楽が与えられようと、伝統に沿おうと、それは全て結果であって、自身が選択したということが大事なのだ。これはあらゆる研究が示している結果でもあるし、その自由を束縛することが社会における一般的な刑罰になっていることからも明らかだろう。それが大事なのだとわかっている人が近くにいて、本当に良かったと思った。

 しかし、ここからが本番である。

 そのことについて、僕は考えを進めていたのだが、やはり、一つの結論は覆しようがないとわかったのである。それは、自由意志は存在しないという事実だ。