2021年の映画館で観た映画に関して
去年は流石にヤバかったのだが、その反動で一気に来たり、来なかったり、日本だけ延期になったり、日本だけ遅かったり(どれだけ根に持つつもりだ)。唯一残念だと言えるのは、席数が半分になるということの快適さを覚えてしまうと、普段のそれが窮屈に思えてしまうこと。まあ、公開しなかったり、日本だけ遅かったりするよりは全然良いですけれど……
・シン・エヴァンゲリオン劇場版
正直、今年一番がっかりしたのは、この映画だったかもしれない。TV版エヴァの先が見られると思ったから、ヱヴァを追ってきたのだし、破やQにはその片鱗があったはずなのに、むしろ、TV版より古い時代に回帰してしまった。これには流石に落胆という他ない。しかも、その2年前には「天気の子」という革新的な映画が生まれてしまったので、余計にそう言える。もう興味がないのかもしれないね。せめて、「シンウルトラマン」が面白いことを祈る……(色んな不安材料から目をそらしつつ)
結構面白かった。まあ、B級ではあるんですが、流石に「バイオハザード」シリーズを取ってきた面々というだけはあって、ゲーム原作のCG主体パニックを上手く描けているし、映画版ならではのシーンが結構あって、かなり良かった。正直、コロナとか中国揶揄のアレとか、そういうものがなければ、もっとまっとうに評価されて、それなりのヒットにはなったはず。少なくとも、こんなボロボロには……というか、正直、コロナ禍ってかなりヤバくて、極一部の超ヒットを除いてかなりヤバいこけ方してる映画結構あるんだよね。「TENET」すら赤と言われるぐらいなので……
・劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト
みなまで言うまい……この映画だけで何本記事挙げてんねん……という感じだし、何回劇場で観たんだ(7回で自分史最高記録更新)という感じだし、BDも予約して、手に入って速攻でもう5回ぐらい観ている映画はこれだけです。毎回新しい発見があるのがすごいし、毎回もう終わるのかと思うのすごい。なんかもう、本当に、最初、皆殺しのレヴューが始まった時の衝撃たるや、本当にその場で死ぬんかと思った。なぜかは知らないが、とても刺さってしまった。初回、ふらふらと半ば茫然自失になりつつ帰った。無事に帰れて良かった。いや、この作品はめちゃくちゃすごいんですよ。めちゃくちゃすごくて、全時代性がありつつ、現代的なんですよ。TV版と合わせて、テーマがしっかりと組み合っていて、対称的であり、素晴らしいんですよ。マジで、この作品の良さが伝わっていない人がたびたびいて、本気で意味がわからないと思ってしまう。もしかして、寝てた? それとも、レベル高すぎてその貧相な感受性では耐えきれなかった?
・ゴジラvsコング
THE RIVERか何かの記事で、『【ネタバレ】「ゴジラvsコング」の例のアイツは「ターミネーター2」を参考にした』みたいな記事のタイトルだけが目に入ってしまい、いや、メカゴジラしかおらんやん……ってなって、さりげなくネタバレを喰らった。まあ、メカゴジラが出ていることは知ってたんですが(?)。しかし、ゴジラの皮が剥がれてメカゴジラになる(T-1000みたいに)やろんなと逆にミスリードされた感もある。内容としてはかなり良くて、2時間にちゃんと収まっててかなり好感が持てた。こういうのでいいんだよ、こういうので。ツッコミどころはツッコミどころで楽しいしね。モンスターバースはこの調子で頼む。めちゃくちゃ儲かったらしいし。
・ブラック・ウィドウ
なんか足らん感はあるものの、無難に家族軸でまとめていて、まあ、いいんじゃないの、という感じ。最近、本当にMCUは単品としての面白さが低めだな。まあ、それは最初からか。極一部を除いて。あと、流石にクライマックスのオチは微妙だと思う。加えて言うと、もっとタスクマスターの戦闘シーンが欲しかったです。しかし、MCUドラマシリーズの方のガバガバ戦闘シーンになれてしまっていたので、流石に映画版の殺陣のレベルは数段違うなーと思った。どうして、こんなに違うんだろうね? 予算の差なのか?
・ワイルド・スピード/ジェットブレイク
いつもの奴がいつものノリで。ちょっと長いけれど、楽しめた。ハンの戻り方が流石に強引すぎて笑うし、いつも同じようなマクガフィンの取り合いばっかりしているのは脚本の芸がなさ過ぎて笑えてくるが、まあ、そこが主軸ではないので。いつも革新的なカーアクションを生み出してくるのは感心している。あと、ジョン・シナがいい。というか、ああいうポジションのキャラクターに弱い。シリーズ全体のラスボスになるのかと思ったら、最終的に仲間になる枠でビックリしたが嬉しかったよ……
・ザ・スーサイド・スクワッド
大傑作。まさか完成度に泣かされるとは思わなかったよ。流石のジェームズ・ガン。全てが上手いとしか言いようがない。まあ、ミッドのあれは悪趣味が過ぎるという話はあるが、悪趣味がそのまま映画になったような作品なので……テーマと物語的な調和や、外連味の利いた各シーンにしびれる。最初から最後までしっかりと、監督の技量と予算が行き届いていて、最高。「スーサイド・スクワッド」はもう底にいる評価をさらに落とすことになり、奈落へ消えていったと伝えられている……
・フリー・ガイ
個人的には良作ぐらいなんだけれど、世間的にはかなりヒットしている。シンエヴァ除けば一番ギャップを感じたかもしれん。結局、全体的に楽しい映画ではあるし、それがコロナ禍で求められている映画だということはわかるんだけれど、各所各所に必要性がないものばかりが散りばめられているし、テーマを考えても、語られているようで語られておらず、噛み合いが悪いまんまになっているんだよね。続編はマジで何やんの?
・シャン・チー
普通のMCUという感じ。まあ、「キャプテン・マーベル」とか「ドクター・ストレンジ」とかよりは面白いかな。……いや、同じぐらいか? 頑張って中国っぽさを中国に寄せていたと思います(?)。ヒーロー映画ではヴィランを魅力的に描くべきだと、常々僕は主張しているのだけれど、流石に主人公を食ってる。しかも、クライマックスの解決もなんかノリで論理展開がないので、マジで微妙な作品。なんでこんなことになってしまったんや……普通にやればもっと面白くなると思うんすけどね。なんで普通に出来ないの?
・レミニセンス
こいつが評判悪いのはわかる。まあ、監督に実力がない感じがあるし、各シーンも無駄が多かったりして、書きたいシーンと書きたいシーンが上手く繋がっていない。でも、世界観は好きだし、テーマも好きだし、エンディングも好きだったので、好きになってしまった。繋がりが悪いだけで、シーンだけ切り取ると、結構いいシーンもあるんですよ。まあ、逆に言うと、それだけなんですが……
・007/ノー・タイム・トゥ・ダイ
時間ない中撮ったんやろなー感があふれ出る作品。悪くはなかったけれど、良いところも特になし。まあ、クライマックスぐらいだろうか。歴代007は色々とガバガバらしいけれど、ダニエル・クレイグ版はその中でもリアリティレベル高めだったとは思うが、流石に今作はガバ。派手なアクションシーンは当たり前のように良いのだけれど、細かいところに監督の技量が行き届いてないし、テーマも特に何もなく、ダニエル・クレイグへと手向けとなり、アナ・デ・アルマスがカワイイ(「ブレードランナー2049」の頃からそうだけれど)だけの作品。
・DUNE
名作。観てる途中で、ヤバい、これ、歴史に残る作品を観ているかもしれん……って鳥肌が立った。主人公を軸にSF大作を上手く再構成していて、ドゥニ監督が過去作で紡ぎあげてきた演出がぎゅっと詰まった、めちゃくちゃすごい作品。技量が行き届いている。各シーンの完成度が高すぎる。文句のつけようのない完成度。各SF作品の父母とも言える作品が、それにふさわしい監督の力を持って現代に具現化した。ただ、ちょっとアクションだけはもっさりしていた感じがある。シールドの設定ゆえか?
・G.I.ジョー:漆黒のスネークアイズ
日本人だとめちゃくちゃ楽しめる作品。ところどころ面白いアクションがあるんだけれど、まあ、逆に言えばそれだけ。ただ、基本的には日本が丁寧に舞台になりつつ、丁寧に踏まれているという感じで、そのギャップが楽しい。なぜか妻が激ハマりしてた。男と男の巨大感情だからか? ユニバース化の予定があり、複数作の契約だったらしいけれど、爆死によってかなり怪しい。ストームシャドーの人、めちゃくちゃ好きなので、続編が観てーという気持ちはかなりある。
・エターナルズ
最近のMCUだと、ようやく面白くて意味のある作品が出てきたな、という感じ。キャラクターも多い中でしっかりと紹介しきっていて、キャラも立っているし、それぞれの心情も信条もちゃんと書けてる。何より、基本の構成がかなり良い。ヒーロー映画ノルマみたいなところがクリシェになってはいるけれど。あと、キャストの関係なのか、なんかメタの都合を感じさせるなーと思う展開がなきにしもあらず。とはいえ、今作のクライマックスはある意味で、アンチヒーロー的とも言えるし、非常に、今まで以上にヒーロー的とも言え、かなり深みのあるMCU映画になっていると思う。この物語とテーマの構成力が感じ取れない人は概念化の器官が壊れていると思うので修理を申し入れた方が良いと思います。
・ヴェノム レット・ゼア・ビー・カーネイジ
短いのは良いと思うし、そのブロマンス路線は嫌いじゃないんだけれど、でも、90分として脚本が書かれた作品を90分で観たかったな、という印象。結構、カット感が強くないですか? クライマックスとか、アクションのつなぎが不自然なところもあったし。カーネイジ周りの話もあまり主軸が置かれていないというか、特に面白くも何ともなかったので、もうちょっとどうにかできなかったかな、という気持ちがある。共生できるものとできないものをテーマにしたのは良かったと思うのだけれど……
・マトリックス レザレクションズ
これは世間的にはどうなんやろ。個人的には良いと思うが、前半は嫌いで後半は好きという感じかな。なんというか、監督の「マトリックス」について思うことが全部ぶち込まれているという感じで、その上で変にメタ的な構成だから、その辺がノイズになっていて、僕は嫌いなんだよね。主張自体や、「マトリックス」でもまだ、革新できなかった部分を描き直して革新しているところは好きではあるのだけれど。とはいえ、亡霊みたいなものかな。エージェント・スミス役の人が新しくなってしまって、それゆえにしっかりとアクション出来ている側面もあるのだけれど、ヒューゴ・ウィーヴィングだったら、もっと興奮したんだよな、と思ってしまう自分を抑えることはできなかった。
・ラストナイト・イン・ソーホー
エドガー・ライト、映画撮るの上手すぎ……ってなった。エンディングが特に好き。あと、最近は逆に黒人のキャラクターの方が理知的で人格者ってこと、本当に増えたよね。「スリー・ビルボード」もそのパターンだった。逆だとバッシングされるもんね。良い作品であるとはいえ、僕自身は古き時代への思いが全くなく、都会田舎とかも全然ピンと来ないので、僕のための作品ではなかった。しかし、さらに磨かれたエドガー・ライトの演出は一見の価値がある。しかし、サイコホラーよりというのもあるのだけれど、「ベイビー・ドライバー」の方が先に行っていると感じる部分もあり、全体的にはちょっと残念だった。まあ、自分史上最高レベルの作品と比べるのはちょっと可哀そう感はあるけれど……
まあ、こんな感じだろうか。「キングスマン:ファースト・エージェント」はIMAXじゃないし、FOXだから、「最後の決闘裁判」と同じで速攻でDisney+来るしな……と思ってしまって二の足を踏んでいる。恐るべき配信サービスの影響。全体的に素晴らしい映画監督の作品が多い年だったし、こうやって書き出してみると、映画復活、という感じで素晴らしいね。興行収入がちょっとヤバい作品がちょくちょくあるのが気掛かり、というところ。あと、「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム」をここに加えたかったです。「DUNE」があって良かった。
今年の3作品は、「劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト」「ザ・スーサイド・スクワッド」「DUNE」ですね。正直、個人的な評価軸では、この3作品と他の作品は格が異なっていて、一線が画されているという感じ。そういう作品が3作品もあった時点で素晴らしい年だった。