「DUNE」の感想

 とにかくすごい映画だった。もう、本当にすごい。途中からもう、歴史的な傑作を観ているかもしれない感がすごかった。

 全体のレベルが非常に高い。演技、演出、映像、美術など、文句の言いようがない。個人的には、アクションだけちょっともっさりしている気がするけれど、まあ、シールドの設定とかもあるので、その関係な気もする。(予算の都合という気もする)

 今回上映したのは、パート1であり、始まりに過ぎないような部分だけが映画化されているのだが、「ロード・オブ・ザ・リング」(特に旅の仲間)を思い起こさせるような始まりの予感と、異世界に心を奪われるような、そういう映画になっている。

 ただ、正直に言って、「ロード・オブ・ザ・リング」のピーター・ジャクソンは、その監督の力が他のレベルに釣り合っていなくて、他の部門の足引っ張ってるなーという印象を抱いたと思うのが、「DUNE」とドゥニ・ヴィルヌーブはその逆である。彼が、他の部門のただでさえ、レベルの高いものを、さらにもう1段階上へ引き上げている、という感じがある。異次元の完成度に突入している。

 もちろん、話は目新しくも何ともない、貴種漂流譚であって、「スター・ウォーズ」や「風の谷のナウシカ」で観た奴やん、ってなるのだが、というか、これらの元ネタなので、そうなるのは当たり前なのだが、しかし、それを超えるものがある。本流としての力強さがある。舞台は壮大でも、基盤になっているのは、現代と変わらない人間の感情だ。そういう、基本がしっかりとされている。膨大な設定も違和感なく、ちゃんとインストールできるように、映画がコントロールされている。

 いやぁ、「メッセージ」や「ブレードランナー2049」の時点で、あり得ないぐらい映画にするのが難しいSF作品を一流の映画に仕上げる腕があるのは明らかだったのだけれど、それにしてもすごい。すごすぎる。ノーラン超えたかもしれん。ノーランの場合は、やはり、卓越した時系列の取り扱いという特殊能力に近いものがあるが、ドゥニ・ヴィルヌーブの時系列を乱すようなカットイン(「メッセージ」「DUNE」)も、それに匹敵するレベルだし、とにかく彼の作品には外れがない。やばい。僕の中の祭壇に祭らなければいけないようだ。

 僕がよく観る、ブロックバスター級の洋画が年末に詰まっているので、地殻変動が起こる可能性もそこそこあるのだけれど、よほどのことがない限り、今年のベスト3は、「劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト」と「DUNE」、あとまだ観ぬ何か、だな。「エターナルズ」、「マトリックス リザレクション」、「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム」あたりが有力候補か。どれも期待してます。