勧めたくなる関係性

 最近見た映画で、情報の非対称性から、関係性に非対称性が出ていて、これこれ、と思った。たとえば、「とある魔術の禁書目録」で、主人公は記憶喪失をしているが、ヒロインはその前の記憶も持っていて、みたいな構造に近い。そういう非対称性が、人を引き付けるような関係性を生み出すのだ。

 僕は以前、レイヤーによる関係性の複雑性が大事だということを提唱した。たとえば、ループもので、1回目のループと2回目のループでの関係性が異なるとか、バイト中の設定された関係と現実での関係とか、前世と今世における関係とか、そういう感じだ。それに加えて、情報の非対称性による関係も大事だと思った。

 つまり、端的に言ってしまえば、普通の関係性はありふれているんだ。誰かと誰か、という2人に素晴らしい関係があるとしても、現実としてよくあるぐらいの、たとえば、表層面と本心が異なるとか、それぐらいのレベルでは、興味を惹く要素にすらならない。レイヤーを重ねたり、非対称性を出すことによって、ようやく、特筆すべき関係性になると感じる。これぐらいはしないと、関係性で売り出すには弱いと思ってしまう。

 要求レベルは、どんどん上がっていくだろう。インターネットが発展していく限り、情報量は信じられないぐらい多くなっている。毎日、山のように出来の良いWEB漫画がアップされていく。毎日、海よりも深い考察による小説があげられていく。毎日、空よりも広いジャンルの映画やドラマが制作され、定額配信サイトに登録されていく。その中で、その一つを、これを読みたい、観たい、広めたい、勧めたい、と思えるような作品にしなければならない。創作者にとってはつらいだろうが、消費者にとって、こんなに有難い環境はない。創作物のレベルは日々進化していく。だから、僕は今日を生き、明日も生きている。