「キミオアライブ」の感想

 ボロクソ言ってるかも。いや、普段、このレベルなら感想を書かないだけで、並みの作品だと、これぐらいの感想は常に持ちます。ただ、僕は、惜しい作品と素晴らしい作品ぐらいしか、普段は感想化しないので、表面化しないけれど。

 先に言っておくと、絵や演出、キャラクター設定自体のレベルは高いと思います。(心理学的に正しくネガティブ要素を先に言えよ……)

 

 まず、僕がセットアップと呼んでいるもの――テーマやコンセプト、題材や舞台、主人公や周辺キャラクターの設定――が悪い。ゆえに、1~2話の出来が悪い。

 

 第一に挙げられ、一番ダメだと感じるのは、主人公の設定だ。『重病で何もできなかったから、あらゆることがやりたい。その全てが夢である。だから、好きなことをやって、生きていく。ゆえにYouTuberになりたいと思う』という理屈の設定のされ方をしている。けれど、これには明確な疑義がある。なぜなら、YouTuberと、好きなことを全てやっていく、ということには関連性が実際のところはないからだ。だから、あまりにもYouTuberというのがあまりにも唐突なのだ。取って付けたようだと言ってもよい。

 YouTuberは、確かに、好きなことをして、お金を稼げる職業かもしれない。けれど、それは主人公である高校生には関係のないことだ。YouTuberでなくても、好きなことをすることはできる。それには、お金も時間も足りないのなら、それを明確に問題にする主人公にすべきだ。『主人公はあらゆることをやりたがる。しかし、それゆえに金と時間がない。しかし、バイトや仕事のようなもので金を稼いで、時間を浪費はできない。両立しうる場所はないか。今の日本で一番それが実現しうる場所は、YouTubeだと気付く』というような理屈が必要になると感じる。これなら、欲望に忠実で貪欲な主人公が生まれそうだ。欲しいものは全部取って何が悪い、という感じのキャラクターになるし、上手くやれば、カリスマも描写できるだろう。何より、物語を駆動していく情熱を持ち、読者の欲望の一部を切り取ったような主人公になる。

 現状の設定では、主人公がYouTuberである意味がない。YouTubeはあくまで一企業が管理している動画投稿サイトであり、媒体である。ゆえに、媒体にこだわりがない限り、それに執着する必要がないのだ。だからこそ、YouTuberに憧れの人がいるとか、その圧倒的なコンテンツ力や資金調達力を必要とする、というような論理がいる。

 漫画が描きたいという少年がいて、週刊少年ジャンプに執着しているという設定の主人公がいたら、どう思うだろうか。別に他の媒体でもいいじゃん、となってしまうだろう。好きに書いたら? ともなる。有名になりたいとか、稼ぎたいとか、憧れだとか、そういう理由なら、週刊少年ジャンプである意味があるだろう。そういうことだ。

 明確な論理がないのに、主人公がある目標を持ってしまうと、それは作者に与えられたもののように思えてしまう。今回は、YouTuberの漫画を創ろう。その主人公としてふさわしいのは、好きなことを全部やりたいキャラクターだろうな……みたいなロジックで創っていくから、こうなってしまう。キャラクターや読者の論理と、作者の論理が異なる。矛盾する。面白いわけがない。

 

 他にもいろいろとあるのだけれど、一つの理由だけで長くなってしまったので、以下略。いや、本当にいろいろあるんだけれどね。無駄な学校の設定とか。そんなのはいらないし、少なくとも、1話で説明する必要はないし。他にも、無駄に配信してるけど、人や場所に許可とってないとかあるけどね。善性よりの主人公という設定なのに。天然じゃすまされないだろうっていうか、そもそも、日常系とかギャグでもないのに主人公に天然を持ってくることの難しさとか。1話のエンディングで、色々と間に合ってないから、唐突にYouTuber提案されるところの、もはやシュールギャグレベルだろとか。主人公周りのキャラクターは好きだから、主人公を変えて、細かいところを修正すれば、絶対面白くなると思うんだよなぁ。そもそも、絵柄的に表情がわからないタイプの主人公も鬼門で……まあ、いいや。せめて、相棒的なキャラクターがいる形ならな。ああいう主人公には、読者を代弁するような相棒が必要で、この作品のようなチーム形式だと、弱いんですよ。というか、編集はプロだから、それぐらいわかっていると思うのだけれど、どうしてこのような作品が世の中に生まれるかよくわからないというか、こういうことを書くとお前が書いてみろって言われるし、言いたくないんだけれど、僕はただの読者だし、素人だから、本当にそういうことは言いたくないんだけれど、でも、綻びを指摘せずにいられるような人間でもないっていうか、誰だってジグソーパズルがめちゃくちゃに組まれてたら、違いますよって指摘したくありませんか? ジグソーパズルのプロじゃなくたって。そうい――……