燃料の使いどころ

 「ウルトラマンZ」が終わった。ウルトラマンシリーズにしては面白いし、意欲的な試みが多かったと思うが、どちらかと尻すぼみというか、世間で言われているほどは面白くないと感じた。

 では、なぜ、ここまで人気が出たのだろうか。

 

 その仮説として、全体のかなり初期の方に、盛り上がる展開を持ってきたから、というのが回答になると考えている。ここの初期部分は、確かに面白いのだ。

 現代的なウルトラマンシリーズを観ていない人にはあまり伝わらないかもしれないが、ウルトラマンシリーズにおけるフォーマットというのは(時代ごとに区切りがあるが)大抵決まっていて、それに倣った話が展開していくことが多い。

 大きな流れはあるものの、基本的には1話完結で怪獣が出てくる。また、主人公は小さな規模のチームに所属する。ウルトラマンにはフォームがあり、それぞれの紹介回がある……などなど。それらは、外的な要求から決まる流れだ。

 「ウルトラマンZ」もその例にもれなかったのだが、色々な要素が追加されている。まず、他の作品からの要素の流入。「ウルトラマンジード」から、ウルトラマンジードその人が。「ウルトラマンオーブ」からは、ジャグラス・ジャグラーというライバル枠のキャラクターが。しかも、ジャグラーの方は、明示されず、暗示されているだけに留まり、それが主人公の部隊の隊長をしているという状態からスタートする。また、最近はお決まりになっているウルトラマンゼロも追加されている。また、主人公の部隊は防衛隊であり、対怪獣ロボットに載っているという設定もある。

 このように要素が多い場合、シリーズ構成はどのようなものになると考えられるだろう。

 普通、逐次、投入していくのではないだろうか。ちょうど中だるみをしてくる頃に、起爆剤として導入するというわけだ。そうすることにより、作品としての持続走行距離を延ばすという考えだ。

 「ウルトラマンZ」は違った。前半に押し込んでいるのだ。

 もちろん、後半にも目玉は用意されているのだが、前半のそれに比べれば、明らかに弱く、歴代シリーズと同じか少し上ぐらいの要素数となる。前半は明らかに豪華だった。

 これが、良かったのだと考える。

 

 現代は情報過多の時代で、創作もそれに漏れない。めちゃくちゃレベルの高い漫画や映画が無料だったり、定額だったりでみることができてしまう。現代人のボトルネックはもはや、金ではないのだ。時間の奪い合いだ。

 そういう時代に、要素を最初に注ぎ込み、ロケットスタートを切る、というのは、とても理に適っている。

 まず、話題になる。トレンドに毎週のように登場し、ウルトラマンシリーズにあまり興味のない層にリーチすることができる。

 そして、ファンになる。その前半を全力で面白く作り、予算を投入しているのだから、面白い、となる。それを定期的に見るようになる。

 あとは、惰性だ。一度ある程度まで観始めてしまえば、多くの人は最後まで観るのだ。(僕のようなひねくれ者で飽きやすい奴もいるが)

 極端に面白さがなくなってしまえば、見ることをやめてしまうだろうが、ある程度のストーリーとキャラクターがいれば、それだけで見続けられてしまう人間が圧倒的多数を占める。多くの人間は、ストーリーに引き付けられるが、キャラクターによって握りしめられる。キャラクターが嫌いになってしまうようなエピソードにだけ気を配り、逆に魅力的に見せれば低コストでシナリオが組める。

 

 このようになっていると思われる。

 実際、ストーリーがあまりにも凡庸で、明らかに話題になるような完成度がない作品も、基本的に1話や、その少し先までの出来が良い。そこで読者を呼び、キャラクターを好きになってもらって、惰性で引き付けるのだろう。

 

 最近、「PUI PUI モルカー」が話題になった理由にもこれがあるように思える。見た目のキャッチーさや上映時間の短さもさることながら、1話と2話の出来が本当に良い。3~4話も悪くはないが、これが1~2話(時系列はあまりないので、実際にそれができる)だったら、絶対にここまで話題になっていない。もし、2話に配置しても駄目だっただろう。1~2話の出来が出色の出来だったから、ここまでの評価がある。あとは惰性で、皆は見続けるだろう。そして、たびたび話題になり、1話から観始めると面白いから、その先も見てくれる。

 

 週刊少年ジャンプのように、古来から1~3話に注目した構成はもちろん、行われているのだが、口コミ(トレンド)の影響が大きくなったことや、1~3話など前半部分の無料化、生活スタイルの差から、よりスタートの価値が高まっていると感じる。

 弾が尽きる、なんて心配をする必要はない。ただ全力で、最初の3話ぐらいを面白くすればいい。そこに面白さの全てをつぎ込む。あとは、勝手にファンが付いてくる。これが、現代のシナリオにおける鉄則であると考える。