面白さ

 死ぬのが怖い。

 これを克服するためには、無限に生きられれば良いのだが、理論的にそれは不可能だ。次に考えられるのは、なるべく長く生きるということになるのだが、多くの人と同じように、生きるのはだるい。やりたくないことが山のようにあるし、何よりも死が避けられないと知っている恐怖が大きい。大きすぎてストレスが無尽蔵に溜まる。なので、ストレスを解消する必要が生まれる。結果として、エンターテイメントが生きるために必須となる。

 必須、なのだ。

 エンターテイメント作品が面白くないというのは、本当に、致命的な、あまりにも重大な問題なのであって、つまらない作品ばかりに当たってしまうと、本当に憂鬱になるし、生きているのが億劫になってしまう。食べ物なんか吉野家サプリメントであっても、嗅覚や味覚が死んでしまっても、別に生活が変化しないと思うが、エンタメがつまらないと、生活に変化が生じる。生存に支障をきたす。ストレス解消とか、現実逃避とか、そういうものではない。煉獄の炎状態になってしまっている自分に対する回復スキルなのであって、回復が間に合わないというのは危機的な状況なのだ。

 そうではないのか、皆は。そうだろう? だから、人類は文化に大枚をはたいているのではないのか? 世界中で最も流行しているものではないのか? なのに、どうしてつまらない作品を認めることができるのだろうか? 全ての作品は可能な限り面白くいて欲しい。必ず。