採血

 採血が苦手だ。どうにも駄目だ。

 トラウマになる経験もあった。腕に力を入れてくれと言われたから、力を入れたら目の前で注射針が折れた、とか。でも、どちらかというと、単純に感覚が苦手だ。

 どうにも、害をなし続ける、つまり、痛みを与え続けるものが、そこに存在し続ける状態が駄目なようだ。取り除きたくなってしまう。採血は一般的な注入よりも刺され続ける時間が長いため、駄目なのだ。

 同じように、攻撃(注射を)されることが分かっているのに、それを迎え入れなくてはいけないことも苦手であるようだ。防御をしてくなってしまうし、反撃したくなってしまう。

 だから、採血される時はなるべく、そこを見ないようにしていて、別のことを考えながら深呼吸をしているので、毎回、大丈夫かと聞かれる。大丈夫ではないから、そうしている。ただ、大丈夫だということにしておいてくれ。そうじゃないと、僕はこの針をさっさと抜いて、この場から逃げてしまうだろうから。