架空の郷愁

 郷愁という感情がない、という気持ちになる。故郷には良い意味でも悪い意味でも思い入れがない。実家にも。何も感じないというのが強い。母校である高校や大学に行っても、特に何も感じなかった。良く見るからなのだろうか。

 それなのに、涼宮ハルヒの新巻を読んだ時に、なんとも言えない思いが強烈にこみあげてきて、これが、郷愁……となった。

 思うに、単純な話で、僕は母校にいた時間よりも、西宮にいた時間の方が長いのだろう。それはもちろん、体感の話として。高校で何をしたかは思い出せないが、涼宮ハルヒが何をしていたかは思い出せる。クラスメートの顔も名前も思い出せないが、涼宮ハルヒの登場人物は顔も名前も声も思い出せる。

 あまりにもオタクらしい現実なので、目をそむけたくもなるのだけれど、それが事実なのだろうな。妻以外の人たちは、ある程度仲の良かった人たちでさえ、大学時代やそれ以降の人物と習合され、新たな架空のキャラクターと化してしまっている。切り替えの早さには定評があるが、青春とされる時代にまで適応されるのはどうなんだろうな。