断絶

 ある時、職場で『家族のことを優先しすぎでは?』みたいなことを言われて、『気が狂ってんのか、お前は』と言いかけたことを思い出した。いや、言ったか。

 仕事はあくまで、時間や技量を金銭に変換する装置であって、かなり長い時間を一緒に過ごすつもりである家族となんて比較できないほど価値のないものとしか思えないのだが。なんで、そんなこともわからないのか。棚にある絶版してる本より価値ない自覚がなくて困る。

 法律ではそうなっているということを伝えたら、常識ではそうでないと言われたことがあって、愕然としたこともあったな。常識ではお前を殺しても良ければ殺してもいいのか? 本当にくだらない。僕は法治国家に所属している自覚があるので、法律を優先させてもらったが。気が強いことを言っていても、訴えられて勝つ自信がありますか、と聞けば、必ず折れる。判例ぐらい調べてから戦ってくれ。

 なんでこうも、世間の人はずれているんだ。全く理解できない。当たり前のことを当たり前に行うことが最も難しいとは言うが、それにしても、ずれている人間が多すぎる。自分の常識をそのまま確定的なものとし、アップデートもしなければ、法律と照らし合わせることもなく、他者と見比べることもしない。どうしてそんなに視野が狭いのか。どうして、誰かが言っていたことを、そのまま自分の価値観に組み込むことができるのか。どうして、何も考えていないのか。

 皆が少しずつずれているから、基準として用意されているのが、法律ではないのか? 正しい論拠から正しい結論を見出すために用意されているのが、論理的な思考ではないのか? どうして、そういったものよりも、自分の方が正しいと思っているのか、理解できない。