究極の作品

 最高の作品をどうして、求めるのか。ずっと考えていた。そして、気付いた。僕は、この無意味さが、人類の頭脳を面白さでハックして、その究極形を見せつけさせて、滅ぼしたいのだと。

 普通の人間様が、その人生の本質を、必ず迫り来る死に目を向けず、ただ、すぐに消え去ってしまうものだけに意味があると信じ、盲目的に生きているところに殴りつけてやりたい。古今東西、全ての人類に、彼らが必要だと思っていること全てが手につかなくなるぐらい、面白い何かをたたきつけて、それに夢中になって、滅びてしまって欲しい。彼らが何の意味もないと蔑んだものが、彼らの人生を奪ってしまって、等しく無意味であったと気付かせてやりたい。そして、僕もその一員となって、面白さに侵されたまま、死んでしまいたい。

 そうだ。僕は、人類を滅ぼす娯楽作品を欲しがっている。人類を滅亡させる面白さ。それが、僕が、人類が望むべき、究極の作品と言えるものだろう。

 そうすることによってだけ、僕はこの虚しさを認められる気がする。全てが死するという現実を嗤える気がする。そのためだけに、生きていってもいいと思える気がする。