安全な国

 妻は結構昔からアメリカに住んでみてもいいかもということを言っていたのだが、今回のコロナ騒ぎでそんな気持ちは微塵も無くなってしまったようだ。

 彼女はかなり自由な人で、そういうことを抑制する日本の文化とは相性が良くない側面がある。好きな映画やアニメもアメリカのものであることも多く、そちらに憧れがあったようだ。しかし、今回の騒ぎで、理性的でないアメリカの人たちの行動をみて、行きたくないと思ったようだ。彼女は臆病なので、身の危険が余計に強くなるようなところには行きたくないのだろう。

 彼の国は不思議な場所で、世界屈指の科学大国である癖に、宗教も根深く、差別も以前として残っている。疫病に関する最新の研究をしている一方で、神から与えられた呼吸器系を覆い隠すのは罪だと本気で思っている人間がいる。その教育の格差は、確かに恐怖に他ならない。

 日本はそれに比べると平和だ。過激な人が少ないと言えばよいのだろうか。科学的な根拠を依り代にしている人間はアメリカより少ないだろうが、信仰に対しても、同じようだろう。薄いというか、弱い。個々が過激ではない。ゆえに、安全に生きていくだけならば、確かに簡単だ。安全の方を優先してしまうあたりが、僕も妻も小市民的というか、どうにも一般人だよな、と思ってしまう。