蝶の夢なら良かった
睡眠が安定しない。ずっと眠れなかったり、その翌日でとても眠いはずなのにまた眠れなかったり、その後に急に眠れるようになったり、全く周期的にならない。
長時間眠ると、頭がぼんやりとしてくる。ゆえに理性が働かず、もっと寝たいと思うようになってしまう。用事がないと一日ほとんど寝ていることすらある。夢は好きだ。眠りが浅いと夢を見る。余計に眠るようになってしまう。曖昧模糊とした頭でぼうっと部屋を見渡していると、まるでこちらの方が夢のように感じることがある。感情が漠然としていて、どうにも現実感がない。夢の方がくっきりとした感情を抱く。こんな頭では、夢の方がはっきりとした思考をしていて、現の方がぼんやりとしている。夢の方が生きているような気がする。この現実の感覚が妙なもので、当たり前と感じていたことが揺らいでいくような、そんな感覚にとらわれる。
少し経って、頭脳が明晰になってくると、夢と現の差がはっきりとしてくる。自分が現の方に立脚する弱い存在であることが明らかになってくる。ここが胡蝶の夢だと思い込めるような時代なら良かったのに。現代科学は、どちらの可能性の方が高いのか、はっきりと知らしめる。現代に逃げ場はない。僕は人間で、蝶の夢を見ることができる。天が落ちることはないが、僕は必ず死ぬ。現代人は、事実から目をそらすか、目をつぶるかしかできない。できることは限られる。僕は何をすればいいのか。わからないから、僕は時々目をつぶり、現から逃れようとする。逃げることなんて出来ないのに。その夢ですら、現の物理現象でしかないのに。