悪夢

 夢を見る。しかし、昔からほとんど悪夢は見ない。むしろ、多幸感に包まれるような夢ばかりだ。厳密に言えば、腹を抱えたくなるほど笑い出したくなる気分で起きることが多いとでも言おうか。こうなると、現実に生きることが嫌になってくる。

 ここで言う面白さは、物語的な面白さだ。僕は、僕の夢が物語的に面白いことに気付き、この世界にもこんなに面白いことがあるのだから、生きるべきだと思って、目が覚める。冷静になれば、全然面白いこともない話なのだが、寝ているのでそこまで理性が働かず、とても面白いと感じるようなのだ。そして、そのことに絶望する。理性がある以上は、面白いことなんて、なかなか起きないという現実に。

 夢は、記憶の整理をしている際に発生する副作用であるという説が現在の研究では最有力とされる。人類が悪夢を見ることが多い(僕は信じられないのだが、統計的にはそうらしい)のは、記憶の増強に恐怖回路を使用している(悪いことはよく覚えているという原始からのアレ)ためであると考えるのが一般的だ。

 ならば、僕の一日は、覚える価値があることがとんと発生しないような日々なんだろうなぁ。納得しかない。本当に毎日が退屈で死にそうになる。僕のデータを取れば、週5日労働が人間を不健康にしていくことの証明となるだろうに。