「カヴェルナ」の感想
「カヴェルナ」は「アグリコラ」の実質的な後継作であり、多くの部分が一致している。しかし、その差が、大きな効果を呼んでおり、真逆ともいえるプレイ感になっているので、その差異を中心にまとめたいと思う。
まず、アクションが強くなった。「アグリコラ」であれば、畑を耕し、農作物を植えるといったアクションは別にあったが、「カヴェルナ」では同時に、厳密に言えば、and/orという形で実装されている。これが「カヴェルナ」の一つの特徴である。2つほどのアクションが1つにまとまっているのだ。そして、それはand/orという実装になっているものが多い。これはいくつもの利点をうむ。まず1つは、アクションの専有性の緩和だ。ワーカープレイスメントというシステムである以上、あるアクションを先に取られてしまうと自分が使うことはできない。しかし、A/Bと、A/Cというアクションがあれば、実質的にAというアクションでできる場所は2つあるのだ。1つ取られても、もう1つの方に行けばいい。また、同時に効率の良いアクションに順位付けができるようになる。「サイズ 大鎌戦役」でもそうだが、準備が良ければ2つのアクションが同時にできるというシステムは、計画を生み出し、プレイの良し悪しを簡単に把握できるようにする。片方をやりたい場合は、片方もやると効率が良いように調節すればよいので、見通しが良いのだ。
また、食料の調達が比較的楽になった。以前は施設がなければできなかった資源から食料への変換が最初からできるようになっている。この違いは、「アグリコラ」をプレイしたことがある人ほど、強く感じるだろう。「カヴェルナ」もこの点は同じであるが、「アグリコラ」も最初はワーカーが2つしかない。この状態で、資源を得て施設を建てるというのは、2アクションなので、1ラウンドに匹敵する。これが、最初からあるのだ。おかげでプレッシャーが大きく異なる。
次に、ルビーという万能の資源が増えた。これは、各種資源にも、タイルにも交換させることができるというもので、微妙に足りないものを即時に得られるようになっている。これがバッファーとして上手く効いていて、もし、何かのアクションを取られたり、ワーカー数が足りなかったりしても、ルビーで細かい部分を後詰めできるようになっているのだ。
追加点の一番の目玉は、探索だろう。これが、とても良く出来ている。要は、ワーカーにはレベルがあり、それが高いほどより良いものを得られるというものだ。探索にもランクがあり、それが高いと一度に多くのものを取得することができる。つまり、強いワーカーが実質的に複数のアクションをとれるようになったのだ。しかも、探索から帰ってきたワーカーは強制的にレベルアップする。レベルが高いメリットは非常に大きいので、何度も潜る。そして、レベルが上がる。このサイクルがとても気持ちいい。また、デメリットも絶妙で、レベルの低いワーカーから配置しなければいけないというルールがあるため、強いワーカーほど、置くのが後になり、強いアクションがすでに埋まっている可能性が高くなる。これにより、多くのワーカーを用意するという戦法(1つのアクションを何度もやる)と、レベルの高いワーカーを少数用意する戦法(複数のアクションを少しだけやる)という2軸が試せるようになっている。それぞれにメリットがあり、とても面白い要素になっている。
他には、部屋という要素があり、これは「アグリコラ」における特殊能力のようなものだが、これは全て公開の早取りへと変更されている。これによる得点も大きく、能力も強いため、色々試したいという気にさせる。
最後に、点数の付け方が大きく異なる。減点は、所有していない家畜と空いているスペースのみになり、ほとんどなくなった。また、加点はシンプルに家畜や野菜、ルビーや金の数をそのまま加点していく方式になっており、「アグリコラ」のような上限がなくなった。これにより、特化戦術が取れるようになっている。
これらの差異の結果、多くの部分でメカニズムを共有しているにも関わらず、感覚が真逆と言っていいほど異なる。
「カヴェルナ」は、セットアップこそ全ゲームで共通であるが、各アクションにより取れる幅が広く、あらゆる戦術を試すことができる。食料の支払いがあるが、比較的問題なく、代替が利きやすい。また、ペナルティが緩く、加点に上限がないため、特化戦術ができ、バランスはあまり重視されない。一方、ランダム性や揺らぎはあまりなく、戦術が固定されやすい可能性がある。
よく「アグリコラ」派と「カヴェルナ」派に大きく分かれると言われるが、僕は完全に後者だ。リプレイ性は「アグリコラ」より低いかもしれないが、多少失敗しても自分の盤面は良いままで終えられるため、気分が良く、やりたいことも多いが、本当にやりたいことはやれたという、良い気持ちのまま終えることができる。「アグリコラ」の場合は、これだけはやりたいというアクションが複数、できないまま終わることがままあるので……この「カヴェルナ」だが、「カヴェルナ:忘れられた部族」という拡張を入れることで、また性質が変わるので、これについての感想も後に書いておく。