死を知覚できない人たち

 これだけコロナコロナ言われているのに、会社に出勤するなんてことをしているから、びっくりしている。

 いや、別に僕はいい(働くこと自体に対してはよくないというか、嫌な)んだけれど、まあ、コロナでは死なないというか、それ以上に通勤電車に飛び降りる確率の方が確実に高いから、それ自体に恐れはないのだけれど、お前らはいいの? って感じだ。

 僕の職場では、ご高齢な方がいるし、もうそれほど若くない僕がダントツで若いぐらいで、老いている職場と言っていい。それ、かなり危ないのでは? 僕なんて、インドア派ではあるけれど、通勤電車で感染したら十分キャリアになると思うのだけれど、職場に入れてもいいんですかね?

 思うに、彼らは死を認識しないようにしているのだと思うのだ。そうでないと正気が保てないのだと思う。彼らぐらいの歳であった僕の祖父は、ある朝、突然死んでいた。心不全であり、70歳を過ぎたら別に珍しいことでもない。10歳未満の子供だって、それなりの確率で突然死するのだから。「クトゥルフの呼び声」でSAN値チェックをあり得ない確率でファンブルして、D100が回りに回って突然発狂死するぐらいには起こり得ることなのだ。しかし、そんな現実を正しく認識して生きるのは、とてもストレスになるのだろう。だから、それよりも高い確率で発生する死にも無関心なのだ。コロナも他人事だと思っているに違いない。そういえば、まだ車も運転していたっけ。どこかで事故ればいいと思っているが。僕の親があれぐらいの年齢で運転していたら、確実に止める。まあ、どこか平和ボケした、それ故にどこにでもいるような高齢者とその家族なのだろう。

 本当に信じられない気持ちでいっぱいになりながら、毎朝挨拶をしている。本当にいいの? 僕はいいよ。別に罪悪感を抱かないどころか、むしろ何の恨みもないが面白いので死んで欲しいと思っているぐらいだから。でも、君たちにとっては、そうでないはずなのに。世界は精神的な盲人で溢れている。