「Spirit Island」の感想

 カードの文章差し替えや、日本語ボードの作成などを乗り越え、ようやくプレイ。まだソロプレイしかしていないものの、なんとなくわかってきたので感想をまとめたいと思った。

 

 まず、テーマが面白い。協力型であり、敵から己を守る「パンデミック」型なのだが、なんと、開拓者から島を守る精霊となるのだ。「カタン」しかり、今までの著名ゲームは主に開拓者側になるゲームであって、それを病原菌のように扱い、撲滅させるのが目的というテーマが面白いと思った。アンチテーゼになっているわけだ。

 次にシステムがスマートだ。いくつかのパラメータがあるハンド構築のゲームとなっており、手札から自分の能力の上限までのカードをプレイして、その結果を反映させるという工程を踏んでいく。その際、カードのプレイにはコストがあったり、効果の解決タイミングが二つあったり、タグ付けのようなものがあり、同一ターンに同じようなカードを使っていると効果が強くなるといった要素があるのだが、僕が感心したのは、成長やカードの回収を別のアクションとしたことだった。毎ターン、自分の成長を行ってから、カードのプレイに移るのだ。その成長の中にカードの回収がある。つまり、他のハンド構築のゲームとは違い、パスのターンが存在しない。これが良くできている。協力型で相手も強いため、かなり心に余裕がない。そんな中、逐一パスをさせられ、何もできないうちに自分の領地が荒廃していくのは気持ちよいものではないだろう。また、成長をカードプレイに組み込まないようにした結果、常に成長はできるため、闘いが加速していき、プレイ時間の短縮にも役立っているように感じて、ストレスレスだった。よくできている。

 コンポーネントも凝っている。自分自身を示したり、自分の仲間の駒は全て木や紙でできており、自然を感じさせるものだが、敵はプラスチックでできており、人工物を想起させるからわかりやすい。残りのHPもコマの倒し方で表現できるようになっており、細かな記憶問題を解決するコンポーネントになっている。僕は正直、コンポーネントは割とどうでもいいのだけれど、こういう機能美が含まれているものは大歓迎だ。素晴らしい作りこみだと感じる。

 最後に協力型の問題も一応は解決している。僕はアルファプレイヤー問題の解決として、現代では大きく分けて3種類の対策があると考えている。1つは裏切りものがいる可能性を入れる。1つはコミュニケーションに制限を入れる。最後が、複雑性を増す、というものだ。「Spirit Island」は最後の対策を取り入れている。皆、自分の領地ともいえるボードを一つずつ担当しており、それをまたぐこともできるのだが、担当が決まっているという印象が強い。そして、その担当の領域を捌くので精一杯のバランスなのだ。これで余計なタイミングまで、他人に制御される可能性が弱くなっている。テキスト量が少ないとは言え、それぞれのアクションはコスト付きのカードをプレイするし、プレイヤー固有の効果もあるから、全て把握するのが難しい。しかし、いざという時に協力もできるから、協力型の利点もそれなりに残している。よいデザインだ。

 

 総じて、シンプルでかなり良くできた、しかし、外連味も十分に残っているゲームのように感じた。ルールブックをよく読まないといけないルールもそれなりにあるのだが、まあ、チームの一人が理解していれば問題ない程度の頻度のものに収まっているし、複雑性の増すルールはオプションになっていて、手ごたえが欲しくなったら使うようになっている。現代のボードゲームデザインとはかくあるべき、というゲームである。