「ワイナリーの四季」の感想

 ようやくプレイできて、気に入って買ってしまったので、その感想を。すでに4回ぐらいプレイしている。

 

 まず、シンプルなワーカープレイスメントなのが良い。ワーカーの維持コストはなく、妙な制限もなく、単純に増やすアクションに対するコストだけがある。ゆえにどこまでワーカーを伸ばしていくのか、そのコストを回収できるのか、といった単純だが奥深い駆け引きがある。

 次に、親方ワーカーの実装が素晴らしい。これは、アクションの枠が埋まっていても、そのアクションができるという特別なワーカーだ。これが、各プレイヤーには必ず1つ付いてきて、それ以上に増やすことができない。これのおかげで、Aというアクションがしたいが、それができないので、延々と次の段階に進めないといった、ワーカープレイスメントにはありがちだが致命的である決定的な状況が起こらないという利点がある。しかし、ワーカープレイスメントの良さはなくなっておらず、むしろ、自分で枠を埋めたアクションを親方ワーカーでもう一度実行できたりするし、相手のアクションを完全に防ぐこともできないので、考えどころは増えていく。初心者に優しく、上級者には更なる深みを与えている、素晴らしい実装だ。これが、「ワイナリーの四季」の白眉だろう。初出がこのゲームでない気もするが。

 あと、拡張がない段階では、四季と言いつつも、春と秋がほとんどノーアクションなのが良い。負荷が軽く、何度も楽しめるし、プレイ時間も短くて済む。春と秋にもアクションがあるようになる拡張である「トスカーナ」も面白くはあるのだが、面白さが1.5倍ぐらいになるのに対し、煩雑さは2倍ぐらいに増えている。この基本セットのバランスは、面白さと煩雑さのコスパがとても良い線で止まっている。

 ただし、強力な訪問者カードは問題だ。もちろん、上記のように基本的なシステムがシンプルであるがゆえに、リプレイ性や多様性が低く、そのままでは問題があることはわかる。わかるが、カードによる効果に強弱があり過ぎるし、プレイ人数によってはさらに拍車がつく。ここは、プレイ人数によって、カードの種類を制御する方式にすべきだったと思う。加えて言えば、パパス・ママスカード(このゲームでは、初期資源を選ぶ際に、父親と母親の組み合わせを選ぶ)に上位互換があるのも問題だと思う。単純に可哀そうだ。

 

 全体的にはとても良くできているし、プレイ時間が1時間もかからないのに、十分な面白さがあるので何度もプレイしたくなる。SM社のゲームは、コアシステムがシンプルであることがとても気に入っている。あと、ヴィジュアルやコマにこだわりを感じる点が。コアシステムがシンプルであるというのは、僕にとって、ゲームのバランスが取れているという点よりも優先度が高い。なぜなら、ゲームの体験やゲームデザインの完成度といったところに重きを置いているからだ。ゲームの勝ち負けは関係ない。ただ、ゲームをプレイするのが楽しいかどうか、それだけが問題なのだ。