矜持

 誇りに思うという感覚が、昔からピンとこない。僕自身、誇りに思うことがないように思えるし、得意なこととか、好きなこととかはあるけれど、誇りに思っているわけではない。

 その中でも一番良く分からないのが、集団として、誇りに思うという感覚だ。つまり、社員として、日本人として、アジア人として、誇りに思うといったようなものだ。思うに、この性質は僕がスポーツ鑑賞を好きでない理由の大きなものとなっている。本当に意味が分からないのだが、贔屓のチームや国の代表が、あるゲームに勝利することが、どうして、自尊心を高める結果となるのだろうか。それに、例えば、韓国が優勝した時に、同じアジアとして誇りに思うと言えるのならば、イングランドが優勝した時に、同じ人類として誇りに思えるはずだ。その自分が属している集団というのは、無限に大きくすることができるのだから、もし、誇れるものと誇れないものに分けるのならば、どこかで明確な一線を引かなければならない。それは、恣意的なものにしか、都合の良いものにしか、なりえないのではないか。逆に言えば、同じ地域であっても別の国だし、同じ国であっても別の都道府県だし、同じ都道府県でも別の人だ、と言えるのではないか。だから、自身の誇りはまだ理解できるにせよ、集団としての誇りは本当にナンセンスだと思う。意味をなさない。昔から集団というものが好きではなく、それに帰属していると思わないせいなのかもしれないな。皆が帰属意識を高めて盛り上がっている中で、数人のしらけている人の一人が僕だった。それこそがまさにこの問題の核心をついていて、要は独立心が強く、協調性がないってことなんだろう。他人は他人であって、僕自身とは違う生き物だ。