「センチュリー:ゴーレム」の感想

 思った以上に楽しかったので、簡単な感想。

 

 これはかなりシンプルなゲームで自分の手番で資源を獲得するか、アップグレードしていき、指定された等級と数の資源を持っていれば得点を獲得できるという構造になっている。これは、あらゆるボードゲームの骨子となっている構造であり、それが余分な肉なしに成立しているゲームと言える。

 その資源の獲得と変換の方法なのだが、これがハンド構築となっているのだ。ハンド構築というのは、デッキ構築の派生、あるいはロンデルの派生と考えられているメカニズムで、代表的なところでは「コンコルディア」というゲームがある。これは獲得したカードを手札とし、一度使用したカードは手番をパスしないとまた使えるようにならないというシステムになっている。デッキの中身を全て手札としたデッキ構築と考えられるため、海外ではハンド構築と呼ばれていたりする。強いカードを繰り返し使用したければ、パスをして手元にカードを戻さなくてはいけない。まとめて回収しようとすると、あまり強くないカードをプレイすることになったりする。この回収のタイミングにジレンマとテクニックがあるのだ。

 これが、このゲームに取ってはかなり相性の良いメカニズムとなっている。シンプルなゲーム構造とハンド構築は相性が良いのだ。なぜかと言えば、ハンド構築はフィードバックをすぐに受け取れるからだ。ハンド構築の特徴的な点として、獲得したカードをすぐに使用できることや、引きによるランダムさがなくなることがある。前者の比較対象はデッキ構築と言うことができ、そちらでは、獲得したカードは(例外があるにせよ)捨て札に行き、それをデッキに再構築してようやくそのカードを引く可能性が生まれる。使用できるのは、さらにその後だ。どうしてそれがあまり良くないかというと、フィードバックが生まれにくいからだ。つまり、Aというカードをすぐに使用できないと、Aというカードを獲得したために、勝利に近づいたのか、遠ざかったのか、その検証がすぐにできない。しかし、ハンド構築なら、それがすぐにできる。後者の差違である、引きによるランダムさがないのも同様だ。デッキ構築では、AとBというカードにシナジーがあっても、それが望む順番で出てくるとは限らないので、コンボが生まれない場合がある。もちろん、それもデッキ構築の面白さではあるのだけれど、ハンド構築だと確実にやりたいことがやれるという面白さがあるのだ。

 また、得点のカードを裏向きにするというルールがあって、最初、僕はそのルールを訝しんだ。何故かと言えば、得点のカードを獲得する瞬間はみんなが見ているので、裏向きにする必要がないからだ。しかし、それぞれの得点がわかった方が良い動きができるゲームなので、記憶力が良い方が強いということになってしまう。記憶力のゲームではないのに、それが勝敗に関わってくることに疑問を抱いたのだ。しかし、これはキングメーカー問題の対策なのだと、今は思っている。キングメーカー問題というのは、僕の選択肢によって、Aが勝つのか、Bが勝つのかが決まってしまうという問題だ。これは結構大きい問題で、その人自身の勝ちはもうないのが問題の根幹となっている。選択肢を合理化できる基準である、自身の勝利がないのに、その選択でゲームの勝者が変わる。そうなると、AやBが勝ちを強く意識する人間だった場合、僕は無駄に恨みをかったりすることになる。このゲームはシンプルゆえに、こういった問題が発生しやすい。しかし、得点が一応は裏向きになっていれば、自分が勝ちの可能性があったとか、そういう風に(実際にはそうでないと本人がわかっていたとしても)言える、というのが大きい。納得感が違うだろう。言い訳をゲームが用意してくれているのだ。これは良い実装のように思える。よりよい実装がある気もするけれど……

 しかし、フレーバーのゴーレムが良いね。ゴーレムはもうほとんど関係ないのだけれど、その強さや優しさ、儚さみたいな雰囲気が何となくあるのが良い。そういう雰囲気があるのが、ゲームという一過性のものを楽しむ遊技と調和しているように感じる。それにしても、どうして、ゴーレムにはそういう儚さがあるのだろうという話を妻とゲーム後にした。「天空の城ラピュタ」の影響ではないかという仮説がまず出た。彼らはロボット兵ではあるのだけれど、高度な科学技術は魔法と区別がつかないという話のように、魔術的なロボットのようにも見え、それがゴーレムらしさに繋がっているのだろう。土らしい外見もそう思わせている。あるいは、ロボットにもある人間の都合で生み出され、命令を準拠するという姿に儚さを見出すのだろうか。はま寿司のペッパー君に健気さを感じてしまうような……人の都合に振り回され、命令に従う社畜には儚さというより、憐憫を抱くけれど。造られたというところが大事なのかな。自由意志に関する感情に起因しているような気もするな。

 プレイ時間も短くてすむから、リプレイ性もあるし、初心者にもオススメだ。まだまだ面白いゲームはいっぱいあるなぁ。色々とやっていきたい。