「レス・アルカナ」のデザイン考察

 「レス・アルカナ」というボードゲームは、簡単に言えば、お気軽ドラフトコンボゲームといったものになる。MTGを始めとしたゲームによくあるコンボという要素は、簡単に言えば、あるリソースを他のリソースに変換することを大元としている。それを、「レス・アルカナ」は端的に示している。

 

 このゲームには、MTGにおけるアーティファクトやクリーチャーに該当するアーティファクトカードがある。これは数多くの種類があるが、1プレイで1プレイヤーが使用出来るのは、ドラフトで入手した8枚のみである。これが、リプレイ性を高めている。同じようにドラフトできることはまずないから、毎回、新しい戦略を試すことができるのだ。

 一方、マジックアイテムという完全に固定なタイルがあり、それをプレイヤーは一つ持ち、使用することができる。これは、カードゲームにおけるコンボにおいて、真に重要な役割を示す効果の集まりだ。リソースの確保や、手札のリフレッシュ、アーティファクトのアンタップなどができる。これらは、コンボのいわゆるエンジンとなる部分であるから、必要不可欠である。これが、例えば、完全にランダムになってしまえば、軸となる効果を持つカードが存在しないということになりかねない。それを防止するために、本当に必要なものは別枠で毎回、確実に用意されているのだ。

 また、力ある場所(パワープレイス)と呼ばれるタイルも存在する。これは、ゲームの勝利条件となる勝利点を生み出す、いわばゴールだ。前述のアーティファクトやマジックアイテムでは、リソースの確保や獲得は出来ても、勝利点はほとんど獲得が出来ない。それらで生み出した多くのリソースを、この力ある場所に費やし、勝利点を10点集めて、勝利というのが、基本的に勝ち方となる。力ある場所はそれぞれに大きい特徴があり、一つのマナに偏っているといいとか、ドラゴンが多いと強いとか、そういうカードプレイにおける大きな指針にもなっている。これは「レース・フォー・ザ・ギャラクシー」や「ドミニオン」などのカードが完全にランダムなゲームにありがちな、目標とすべきカードがなく、微妙に強そうなカードを集めているうちに、なんとなく勝った/負けたという体験をなくすのに貢献している。最初から、大きな目標が目の前に存在するのだから。

 そして、もう一つの勝ち筋として、モニュメントというカードがある。これは主に勝利点と強力な効果を持つカードで、しかし、その購入には黄金という特殊なマナがいるようになっている。これは力ある場所とは異なった勝ち方ができるようにするためのものでもあり、もちろん、両者を適切に組み合わせるといった境界線上の戦略を増すための道具だ。

 こういった、全体の設計が非常に良くできたゲームである。戦闘といった要素を最小限に抑え、多くの人間が魅力的に感じるコンボ、あるいはエンジンビルドといった要素を主眼に置き、それを早く達成できた人が勝利を掴むようになっている。

 そのために、ランダム要素が大きく、リプレイ性を増すためのアーティファクトカード。常に必要なものが用意され、エンジンをかけるための道具になるマジックアイテム。プレイの指針かつゴールそのものでもある力ある場所。もう一つの勝ち方を提供するモニュメントカード。設計に無駄がない。

 プレイ感も手軽で、何度も出来る良作だと思った。言語依存性もそれほど高くない。