意味のない/ある選択肢

 僕の嫌いなものの一つに意味のない選択肢がある。狭義には、FGOなんかについているアレだ。すぐ後のリアクションが変わるだけで、数クリックで共通に戻る。それ、いらないよね。意味のない選択肢ばかりあるゲームは、まるで人生のようで嫌いだ。

 しかし、広義には、ほとんどの選択肢の本質は、意味がないと言えてしまう。例えば、選択を間違えるとゲームオーバーになってしまうタイプの古い選択肢では、最終的に正しい選択をし続けなければならないし、ルート分岐をするタイプでも、全てのルートを観るためには、最終的にどの選択肢も選ぶことになる。トゥルールートのフラグがある選択肢の場合も、同じだ。「シュタインズ・ゲート」のように選択肢は主人公が直接見えないものだから違和感があるとして、別の媒体に預けているものもあるが、本質は変わらない。これは、アドベンチャーゲームという特性上、しょうがないことのように思える。なぜなら、物語にとって、選択肢というのは基本的に邪魔なものである。適切な見せ方、順序というものがあり、固定にした方が、経験はより良くなるものだからだ。

 意味のある選択肢などないのだろうか。いや、そうではない。少なくとも、抵抗の歴史はある。「Detroit: Become Human」は力技で意味のある選択肢を実装した例だ。このゲームは膨大な選択肢があり、そのほとんどが後の物語に影響し、そのまま続いていくという、誰もが妄想するが実現し得なかったものをかつて無いスケールで実現させてしまっている。間違った選択をしても、物語はずっと続いてしまう。それ故に、選択肢に意味があるように感じさせているのだ。

 また、ここで、あるゲームに関して言及しようと思う。あまりにも有名になり、今更ネタバレという感じでもないのだが、「君と彼女と彼女の恋。」(以下ととの)と「Doki Doki Literature Club!」(以下DDLC)に関するネタバレがあるので、両者をやっていない人は今すぐ、こんなくだらない文章を読んでいる時間を、名作をプレイする時間に変えよう。後者は無料でSteamからダウンロードできるぞ!

 

 

 

 

 では、ととのの話に移ろうと思う。このゲームはよくある(?)メタゲームでもありながら、いくつかの点で特に優れていると思っている。

・複数作品を統合したヒロインという概念を扱っており、もう一段階メタな内容も含む

・現実世界のコードを探すといった、ゲーム要素にメタを入れた点

・組み合わせのランダムさによって、一部のみではあるが、ヒロインの唯一性を確保した点

・最終的な選択が不可逆な結果を生む点

 この中で、最も最後の項目こそが、意味のある選択肢だ。これを選んだ後は、ゲームをアンインストールしない限り、その結果を変えることは出来ない。不可逆なのだ。

 

 次に、DDLC。これもまた、別の視点からもう一段階進んだ表現があり、特筆すべき点としては、

・ゲームシステムのエラーという表現がなされている

・プレイヤーがシステムのデータを消すというゲーム外の操作が実質的な攻略法となっている

 ここで最後の点は選択肢というかは微妙だが、あの永遠を甘受するか、拒否するか、という選択をデータの保持/削除という点で選ばされていると考えたい。これもまた、基本的には不可逆だ。

 

 つまり、意味のある選択肢というのは、それぞれの選択の先には異なった結果があり、それが不可逆であることが大事なことのように思える。しかし、上に挙げた先進的なゲームですら、これは一部分でしか実現できていない。なぜならば、両者はデジタルであるがゆえに、アンインストールした後にインストールすることで、もう一度、一から始めることができるからである。実際に僕は、両者とも二回以上プレイしている。なら、本当に不可逆な、重みのある選択が実現できるのだろうか。できる、と僕は思っている。そのために、必要なのは、アナログだ。