物に関して

 今回の台風、僕の付近は何ともなく、次の日から日常が始まってしまったぐらいなのだけれど、同じ市内で川が決壊していたこともあり、いつもより緊迫した雰囲気があったように思える。連休中、朝にはヘリコプター(報道か救助かのものだろう)の音で目が覚める程度には、近しい場所で災害が発生していたのだ。

 水につかる家や車をみて、やっぱり、こういうものには執着できないなと思った。いや、執着しない脳で良かったなぁという感じか。物であるということは、こうやって理不尽に奪われてしまう可能性があることになる。それを、自分の好きな物で固めて、高価な物で揃えて、そのために懸命に嫌なことを我慢して……その先がこれだと思うと、どうにも可哀想だ。それは人に関してもそうで。災害や事故などであっという間に消えてしまう可能性がある。物である以上は。そういうもののために、自分の人生を費やす気にはなれないんだよね。だからと言って、これに費やしたいというものが見つかっているわけではないのだけれど。

 無い物ねだりだな。そもそも、僕自身が物であるのだから、そうやって不意に無為に突然に消え去るものであって、それを後生大事にしておくことなんて出来やしないのだから。それだったら、僅かな時間でも執着を持って、価値があると思っているものが傍にある時間を過ごせた方がいいのかもしれないね。所詮、全ては主観的な世界でしか価値を持ち得ないのだから。