「インセプション」に関して

 個人的に五指に入る映画を、と思った。

 僕が考えるホットスタートは二種類あって、時系列順のホットスタートと時系列無視のホットスタートだ。「ダークナイト」「ベイビー・ドライバー」は前者。「デッドプール」「ゴーンガール」は後者。しかし、とてつもない作品は両者に該当する。この作品もそれに含まれる。

 故にわかりにくさもある初見でも十分に面白い(これが重要)が、真髄がわかるのは二周目となるだろう。しかし、それにしても面白い。映像的にも未見性が高く、ストーリーは誰もが思うこと(夢の中の夢、夢と現の違い)をメインとしており、トーテムといった重要でわかりやすいアイテムも満載している。さらに、クライマックスまでのテンポがとても良い。クライマックスをある人物の夢に入る地点とすると、一時間しかかかっていないことになる。しかも、その先も夢の中の夢が繰り返していくので、複数の場面を渡りながら、それぞれで危機が発生し、それがその奥へと干渉していく作りになっていて、興味を引き続けることに成功している。単純に僕がミッションクリア型の作品が好きだということもあるが、最後の夢から覚めての、それぞれが他人のように、しかし、目配せをしながら解散していくところは、かなり格好いいと思う。そして、余韻のあるエンディング。完璧である。本当にすごいなぁ。文句なしの傑作だ。