アイドルオタクに関して

 この間、空港にいる時、隣にアイドルオタクらしき女性たちがいた。おそらく、BTSみたいな名前の韓国の男性アイドルグループのオタクらしくて、色々と周囲を憚らずに話していた。その時、彼らがシャツか何かの交換イベントをしていた記事を読んでいたらしく、AとBが交換しているのはエモいとかなんとか、そんな発言をしていて、素直に気持ち悪いと思ってしまった。

 架空の存在に対して、そういう言葉を使うのは良いと思うんだよ。カップリングだろうが、関係性だろうが、感情だろうが、いくらでも読み取ることは出来るし、ある意味でどれも正解で、不正解であるから。どうとでも規定できるし、規定されればそれが事実になるのが想像上の存在というものだから。どこまで言っても、全てが事実で全てが虚構だ。

 でも、実在の人物に対して、そういう言葉を使うのは、まるで実在の感情を、事実を無視したことのように感じてしまう。その人たちのファンということは、その人たちが好きなのだということであって、その人たちの本当の思いを大切にしたいとは思わないのだろうか。それを外部が勝手に、エモいとか、尊いとか、そういう言葉を用いてしまえば、否応にも彼らの関係には不純物が入ってしまうと僕は思ってしまう。外圧が生じる。アイドルはファンに対して夢を見させることを生業としているのだから、ファンからの要求というものは、強い圧力だと思う。だから、本当は好きではないのに、何の感情もないのに、彼らが望むことを自然とやってしまうということはあるのではないか? そんな風に思ってしまうのだ。そして、そうやって本当の感情を事実上、排除してしまって、ショーと化した行為に対し、感情が動かされるというのは、どこか変な気がするんだ。架空の存在を彼らが演じており、その架空の存在だけ(演者と同名同形のキャラクターがいて、その後者にだけ)に対してファンだというのなら、その意図は理解できるのだが……このような指摘に対して、アイドル好きは、それぐらいわかっているといった弁明をすると思うが、実際に混同を全くしていない人間が何人いるのだろう。Vtuberのような外部と内部の姿が異なった状態ですら、ほとんどの人間が架空的なものと実在的なものを混同し、あまつさえ、それを新しいコンテンツに対するスパイスとして消費しているのに。

 まあ、別に個人の勝手だからどうでもいいんだけれど。なんで、上記のような会話に嫌悪感を抱いたのか、改めて考えて見るとこういうことだとわかったので。嘘の感情は嫌いなんだよな、昔からどうにも。事実とは異なるものだけで構成されたものは、核がないから無意味だと思ってしまう傾向にある。物心ついた時から集団を苦手とする理由の一つだと思う。