旅行中の感情に関して

 phaさんが言っていた。旅行に行く時はかったるく思えて、行ってみると楽しく、帰りたくないと思う、と。僕は逆だ。旅行に行く時はワクワクして、行ってみると飽きてしまい、早く帰りたいと思う。

 旅行の目的はいろいろあるけれど、大きなものに日常から離れたいという気持ちがあると思う。多かれ少なかれ、ルーチンの渦に巻き込まれてしまう日常から離れて、非日常を楽しみたいと思っているのだ。しかし、旅行に行ってしばらくすると気付いてしまう。ここもまた、日常であることに。

 一つは、旅自体に慣れてしまう。異国の地にいてさえ、そこに順応していってしまう。日用品の物価がわかる。感謝や謝罪の言葉がわかるようになる。非日常が日常に侵食されて行ってしまう。理解できてしまう。未知がなくなっていく。

 一つは、その非日常こそ、誰かの日常であるということ。ホテルの人や店員、現地のボランティア、皆が日常を歩んでいる。そして、僕はその日常に入り込み、非日常だと勘違いしているだけに過ぎない。そこもまた、誰かの普通であって、手垢にまみれた場所や時間でしかないのだ。もっと大きな渦の中に巻き込まれているだけ。

 あるいは、もともと体が弱く、インドア派であることも、この旅行への飽きっぽさに拍車をかけているのかもしれない。自宅以外の場所で寝ても疲れが取れている気がしないし、一日が終わった感じがしない。最大HPが削られるデバフがかかったような状態で、どんなに休憩しても全開にはなれないんだよね。だから、自分の部屋に引きこもっていたいという気持ちが否応にもわいてきてしまう。

 なにか、もっと遠くの、文化も違うところに旅行へ行けばよいのだろうか。それとも、それでももっと大きな渦の中に過ぎないと気付いて、嫌になってしまうのだろうか。