被恩恵者

 新型コロナでヤバいことを言っている人が炎上していて、一応、その人はどうしてそういう考えに至ったか、ということを調べるために、その主張を一通り読んでみた。で、気付いたのは、彼らが政治や上層社会(そんなものがあるとして)に対して不信を抱き、そこに属している(と彼らが思っている……本当にそうなら、もっと予算が下りてるよ……)科学にも不信感があるということだった。

 つまり、これはフラット・アース(地球平面説論者)の問題と共通しているのだ。

 彼らの主張を良く見てみると、教育というか、高等教育に対する批判が悪目立ちしている。自分は科学的な根拠を持たず、そういった教育を受けていないが、真実はわかる。そういう風に語り始め、大学システムとか、そういうものに対しての批判が散りばめられているのだ。これは、本当にフラット・アースと同じ構図であって、かなり驚いた。コロナ非存在説と、地球平面説が同じ土壌に立っているのだ。

 まあ、ちゃんと考えてみればわかる。地球が球体であることも、新型コロナウイルスが世界的に猛威を振るっているとわかったことも、それは現代科学のおかげだ。現代科学を否定するという視点に立つと、これらは同じことになってしまう。

 そう、彼ら自身は高度な教育を受けていない、というか、単純に無知である。反知性主義なので、当たり前なのだが。それなのに、論文調に主張を記載したり、ところどころで自分たちに都合の良い主張をしているある医者が、とか、ある科学者が、とか、権力者が出てきてしまうのは嗤ってしまうけれど。結局、誰かに伝えようとすると、そこには論拠を持たせなくてはいけなくて、そういうのは科学の役割なので、彼らさえ、科学的な手法から完全に逃れることはできないのだ。

 でも、本当に難しいのだよね。完全に理性を捨てることは、社会に属している以上不可能なのであって、現代の人間社会は現代科学に支配されているわけだから、実際のところ、その恩恵にあずかっているはずなのに、否定している。そういう人たちに対して、理性的に反論することはできない。因果関係を立証しつつ、という流れそのものが、現代科学の基盤であって、それで話ができるのなら、あのような虚像を信じることはできないのだから。どうやって、救えばいいのだろうな。

 

 一つだけ、最後に決定的なことを。

 フラット・アースはアメリカで問題になりつつあるが、アメリカの若い科学者の集まりで、そのことが問題に挙げられていた。そういう知性や教育、資産の分断を招いてしまった原因は、科学者にもあると。だから、馬鹿にするだけではなく、彼らに何ができるかを考えなければならないと。

 新型コロナ非存在論者も社会には一定数存在するようだが、彼らが重篤な状態になった時、彼らを治療するのは現代医学の化身たる医者であり、命を救うのは現代工学を集結させた医療機器である。

 つまり……なあ、わかるだろう?