好きな作家に関して

 映画に関して、信頼しているレビュアーさんがいる。その人の評価は基本的に的を射ていると思うのだけれど、一つだけ困ったことがあって、それは好きな監督に対して評価が甘くなることなのだ。

 それは傍目から観ていても明らかなほどで、どう見ても駄作という作品でも、必死にフォローに入っていたりして、観てるこっちが虚しくなってしまう。

 作品ごとの評価でいいと思うんだよな。例えば、ノーラン監督ほどの人でも、「インソムニア」は駄作だと思うし、実際、途中で一度寝てしまって後戻りしたぐらいだ。野﨑まど作品もほとんど好きだけど、「正解するカド」は文句なしの駄作だと思う。全てが傑作なんて監督が、作家がいるか? いないだろう。

 だから、例え、好きな監督の作品だとしても、駄作だと思ったら、この作品は失敗だったというべきだと思うんだよね。それを戸惑ってしまうと、どんどん自分の評価に嘘をついていくことになり、なにが面白いのかわからなくなってしまいそうだから。

 

 ただ、それが出来ぬほどの人がいるのも、僕は知っている。たった一人、瀬戸口廉也作品だけは、正直、全ての作品(メルマガも含めて)が評価外となってしまって、どれがどれだけ面白いか、客観的に観ることが出来なくなってしまっている。語り口というか、その文体や思考を愛してしまっているから、他の部分での評価が上手く出来なくなってしまっているんだよね。僕にとっては、唯一の規格外の作家だ。