絶望に関して

 絶望を持っていて生きている人間は多いのだろうけれど、どこに悲観的なのかみたいな部分が人によって異なるのだなぁと感じることがあった。

 僕は根本的に自分が死んでしまうが為に、全てが虚無になるというところに悲観の根源があると思っている。世界は別に綺麗でも美しくも素晴らしくも残酷でも醜くもなくて、ただ、そうなるようになっているという考えだ。物理法則があって、そこから人類が進化し、文明を発展させ、その歴史を経ているので、現代社会がこうなっているのは、ある種の必然という主義だ。もちろん、日本の車両がどうして左側通行になっているのかとか、どうして新学期が4月に始まるようになったかとか、大した理由があるように思えず、その過程がよくわかっていないことも多いけれど……でも、まあ、多くの部分でこういう現状になっているのは、自然的に均衡状態であるからという感覚がある。だから、それに対しての絶望というのはない。問題はシステムにあって、そうなるべくしてしまってしまう仕組みにあるように感じるから。ただ、その当たり前に従って生まれて来た僕の意識というものが確実に消滅するという事実が恐怖となって、意識の根幹を支配しているということだけが問題だと。

 本当にどこまでも自分本位で、周りに目が向かないのだろうな。多くの人々は、本を通して知る賢人たちでさえ、最終的には則天去私のような境地に達するのだから。僕がそこに達しない限り、ただ嘆きながら死んでいくのだろう。そうなる未来しか見えないけれど。

 この虚無感を上書きしてくれるものはあるのだろうか。このあまりにも単純で、しかし、それ故に強固な事実から目を背けさせてくれるものは。