事実でないものに関して

 事実でないことが嫌いだ。別に創作が嫌いだとかいうわけではなくて。ただ、単純に表ではこうだと言うことになっているが、実際にはこうなっているみたいなことに結構、嫌悪感を抱く。どうしてだかはわからない。ただ、僕がそういうことを察する能力に疎く、割と健全に純粋に生きていたことに一因はあるだろう。

 合わせて言えば、自分を偽ることも苦手だし、嫌いだ。そもそも隠さなくちゃいけない程の自我があるわけでもないので、自由にやっているが、本当に思っていることを口に出来ない環境にはストレスが溜まってしまう。

 これが割とひどいレベルで、作った声色みたいなものも苦手だ。声フェチなので変な声が好きなのだが、媚びたような声は輪に掛けて嫌いなので、元々変な声質をしている人の声ばかりを好きになってしまう傾向がある。

 また、仲良しグループのようなものまで割と嫌いだ。お互いを好いているという表向きに対して、そんなことはないのでは、という疑念を拭うことができないためだ。本当は嫌いなのに、もうお互いに興味がないのに、その枠組みのせいで、仲を取り繕わなくてはならない。そんな状態でいて欲しくないので、そもそも離れた距離にいて欲しいと思う。ゲームや小説のように、設定がそのまま事実になる媒体では大丈夫だが、アイドルや俳優など、虚実が混じるような場合には特に苦手になってしまう。

 加えて、科学的であるか、つまり、検証可能な事実であるかを重視する姿勢すら組み合わさってきているので、ほとほと生きにくくなってしまっている。自分がそう信じられれば、それでいいと思える思考回路なら良かったのだが。残念ながら、僕は最も事実である可能性が高いものにしか価値を見いだせない。