独り言に関して

 独り言には二つの種類があると僕は思っている。

 一つは、コミュニケーションの独り言だ。これは一人でない時に発する独り言であり、偽りの独り言と言っても良い。たとえば、独り言によって、なにか声をかけて欲しかったり、気まずい沈黙をなかったことにしたりといったことが目的となっている。

 一つは、完全な独り言だ。周りの環境とは切り離されて発せられるものであり、他者がいるせいで(まともな精神があれば)抑制される方の独り言だ。

 僕は前者の独り言を聴くのがかなり嫌いだ。人と接することをコストとする人間にとっては、独り言というものがコミュニケーションの手段と化してしまっていることに嫌悪感しか抱かない。興味のない人間との交流が苦痛なので、構って欲しいアピールはその対象が僕に向けたものでなかったとしても、かなり嫌なものとして感じ取ってしまう。こいつは、この世界に自分しかいないことをわかってないのかよ、と思ってしまうのだ。

 逆に、後者の独り言を発するのは好き、というか僕の病癖みたいになっている。もちろん、他者がいると前者のタイプの独り言として勘違いされ、話しかけられるというリスクを背負うことになるので、なるべく抑制しようとはするのだけれど、どうしても漏れてしまうことがあるくらいだ。きっと、ダウン症などの人が電車に乗っても独り言をしゃべっているものの弱い版なのだろう。発達障害気味の人にはこういう傾向はあると思う。僕もその例外ではない。

 この二種類の独り言は全く性質が異なるのに、混同されているように思える。というか、一般的には前者の用途で独り言は使われているので、僕としては少々問題に思える。どうにか、他者の独り言は聴かなくて済み、自分の独り言は自由につぶやける環境がないものかなぁ……ああ、だから僕は自室が好きなのか……