敵対関係

 なにかに付けて、僕は相手を敵対関係に持って行くなぁと思った。仕事とかでもそうなのだが、褒められていたり、信頼されていたりすると、妙に居心地が悪くなってしまうのだ。実際には、その地位を利用してサボりまくったりしているわけで評価が高い状態とか、相手に頼られてたりする状態は、だんだんと嫌になってしまう。そうして、次のフェイズに行く時なんかに敵対関係に陥ることも多いのだけれど、僕はどうにもその関係に落ち着いてしまう。

 まず、敵対関係というのは楽だ。相手は自分の敵なので、言うことを聞く必要はないし、自身の利益だけを考えていればいい。隙はなるべく見せず、相手の不手際は的確に利用してやればいい。相手は自身にとっての最善、あるいは僕にとっての最悪を選びたがるわけで、逆に行動が制限されてしまい、予見しやすい。友好関係ではそうもいかない。長期的な損得を考える必要があるし、相手の思考だけではなく、感情を読み取る必要もある。皆が敵なら、なりふり構わず、徹底的に戦えばいいが、皆が味方ならあらゆることを調整しなければならない。大変なことだ。

 次に、敵対関係というのは孤独になれる。僕は単純に人との接触時間が多いだけで不機嫌になってしまうタイプの人間なので、同僚に話しかけられたり、後輩に相談されたり、先輩が僕のディスプレイを覗き込んできたり、そんなことを繰り返すだけでもずいぶんと消耗してしまう。死んでいることに定評のある僕の嗅覚も、なぜか人間の臭いははっきりと感じ取ってしまい、実に嫌な気持ちになる。敵対関係に陥れば、必要最低限の接触で済む。何事も自力でやればいいので、話が早いし、疲れもしない。

 こんなことがあるから、僕は敵対関係を創ることに慣れてしまって、人の理想的な距離感に、戦争状態という位置を創ってしまった。これは社会性のある人間として最低なことだが、どうにも治る気がしない。そもそもが人嫌いなのだし。人の世で生きていると、社会の不利益になるので、政府とかが僕に3億円ぐらい渡して隠居させてくれないかね?