歳を取った同じ役者を使うブーム

 あるムーヴメントがある。それは、往年の名作の続編を創り、そこに同じ役者を使うというものだ。たとえば、「T2トレインスポッティング」であり、「スター・ウォーズ」であり、「ブレードランナー2049」である。僕はこれがすごく好きだという話をしたら、家内から思いがけない発言を聞き、少し考えたことがあるので、ここにメモしておこうと思う。

 家内が言ったのは、『本当だったら、そうはなっていない役者を使うのが面白い』という旨のことだった。説明しよう。つまり、作中のキャラクター、たとえばデッカードが作中の設定で時を経たとすれば、今のハリソン・フォードのような体型にはなっていないはずだ。本当にフラットな状態でキャスティングをするならば、別の役者の方が適任だろう。当時のデッカードは、当時のハリソン・フォードが適任だったのかもしれないが、現在のデッカードは、現在のハリソン・フォードが適任だとは言えないということだ。言われてみればその通りで、それは他のキャラクターにも言える。その作中で語られた生き方をしていて、その体型になるかって人もいる。

 しかし、僕は役者の言葉に重みが出るから、これが好きなのだと感じていた。ならば、その重みはどこから来る? 作中では連続しているはずの時間は断絶していて、なぜ、重みが出るのだろう。それはきっと、観客と同じく、再び、作品へと向き合うからなのだと思った。当時に関して、色々と思うところがあるだろう。一度は終え、心の中で整理されたはずの作品に、再び、向かい合い、時を超えて同じ世界へと再訪する。その心の動きが、表現され、作品をより深いものにしているのだろう。そして、それは観客も同じなのだ。だから、当時からリアルタイムで観ていた人は、余計に思うところがあるのだろう。

 この流れはずっと続いて欲しいと思う。あと、「スルース【探偵】」のマイケル・ケインみたいに、リメイクでは老若逆転した立場を演じるというのも、すごい面白いのでもっと増えて欲しい。僕はこれと「釣りバカ日誌」ぐらいしか知らないんだけれど。他の媒体でも、こういうメタ的な背景を作中に取り込めたら、さらなる飛躍が産まれそうだ。