カイロ・レンという悪役の発明

 スター・ウォーズの話になったので、その続きを。

 僕はスター・ウォーズ エピソード7の悪役、カイロ・レンという存在はかなりの発明だと思っているので、どうしてそう思っているのかをまとめようと思った。

 

 スター・ウォーズという作品の悪役と言えば、ダース・ベイダーだ。彼はオリジナルの4~6でメインの悪役を務め、主人公であるルーク以上にスター・ウォーズの顔と言っていいほどの知名度と人気を誇る。パルパティーンはあくまで黒幕であって、真の敵ではあるものの、その影は薄く、舞台装置としての側面が大きい。エピソード1~3では、そのベイダーであるアナキン・スカイウォーカーが主人公(エピソード1の主人公はオビ=ワンという話はあるが)となっている。1~3の悪役も、武闘派かつダブルセーバーで独特のオーラを持ったダース・モールや、知略派のドゥークー伯爵といった、ダース・ベイダーとは違う方向性が模索された。それだけ、ダース・ベイダーの影響は大きかったのである。

 では、ベイダー無き、(そしてルーカスも無き)スター・ウォーズでは、どのような存在が悪役となるべきか。ティザーの段階では、現代スタイルの覆面や、十字ライトセーバーで悪い意味で話題になったカイロ・レンだったが、その設定は非常に優れたものだった。

 なぜなら、彼自身が、ダース・ベイダーに憧れ、追いつかんとする悪役だったからだ。これは、本当にすごいと思っていて、なぜなら、観客の気持ちと一致した悪役なんですよ。ベイダーには敵わないと知っている。そして、それにならんと努力している。これはある意味で、キャラクター造形の放棄だ。ファンたちの間で偶像化されてしまったベイダー以上の悪役を創れないという宣言だ。しかし、それを悪役の造形に持ち込んでしまっている。メタな認識を、そのまま作中の認識として取り込み、悪役を創ってしまったのだ。これで、カイロ・レンは独特の立ち位置を手に入れた。もちろん、ライトサイドに誘惑されていたり、キレやすかったりする性格がとても良いということもあるが、一番はこのベイダーへの憧れという造形が大きいと思っている。

 こういう、一つ先にいった造形が出来ればなぁと、僕はよく思っている。