物語の生け贄

 僕が物語の生け贄と呼んでいるキャラクターの役職がある。それは、物語上、盛り上げるために犠牲が必要な場面で、そこで死ぬために創られたキャラクターたちだ。僕は彼らが生け贄に捧げられるのが、本当に嫌いだ。

 彼らはメインキャラクターの脇にいることが多い。適度にキャラ付けがされているが、失われても時間を掛けて処理しなければならない程に重い個性でない。ほどほどの存在なのだ。彼らは自分はもう満足したとか、どうせ死んでいた命だとか、主人公たちが使い捨てにしても罪悪感をあまり生まないように調整された人生を歩んできている。そして、誰かを助けるために、満足して死んでいく。

 僕はそれが、本当に嫌いで。前述の理由から、彼らはあまり物語の根幹に関わっていなかったり、その影響を受ける多数の中の一人でしかなかったりする。少なくとも、主人公たちのように当事者ではないのだ。なのに、適当な理由を持たされて死んでいく。意図も簡単に、だ。犠牲を出すのなら、もっと重い存在から出すべきだし、そうでなけば、上手く回避してやるべきだ。ただ、死ぬためだけに創られるべきじゃない。