老人の死生観

 僕の祖母は非常に高齢なのだが、気持ちだけは若いままでいるようで、皆に内緒で初詣に行き、転けて怪我をしたそうだ。その怪我で一ヶ月ほど動けなくなり、そんな中で90歳ぐらいの妹が死んだことで、どうやら精神を病んでいるらしい。ああ、本当に彼女らは死を考えていないのだな、と思った。

 僕の会社の社長ももう70歳を超えていると思うのだけれど、僕はいつ死んでもおかしくないと思っている。けれど、本人はあと10年は現役でいるらしい。そんな奴ほど、末期癌なんかが見つかったりして、大騒ぎになるんだろうな、と思った。

 彼らと話をすると、驚くほど死を認識していないことがよくわかる。僕の祖母なんかはカルト宗教にはまっているぐらいなのに、死が怖いんだってさ。ざまぁみろ。そうやって、逃げて逃げて、目を逸らしているから、いざ目の前に来ても怖くて直視できず、そのまま死んでしまうのだろう。その前に白痴になってしまうのかも知れないなぁ。勉強も思考も放棄した結果、形だけの長寿を得た姿がこれだ。なんと醜いと思わないか? それなら日頃死を意識して、いざという時に自らその幕を閉じられるようにしていた方がよほど理知的だ。それが人間という理性を持った獣としての姿だと僕は思う。身内だろうが恩人だろうが関係はない。死から目を背けている人間は死ぬべきだ。ジグソウやラッドほど過激な手段には出られないが、少なくとも僕はそう思っている。