会話に関して

 妻と話をしていて、僕たちは無口なのではなく、他の人とは話す内容がないから黙っているだけだという話をした。実際に、僕と妻は時間さえあれば無限に話してしまうため、どこかで区切りを付けて止めにしなければならないほどだ。しかし、両者ともに社会的には無口な部類に含まれることは想像にたやすい。

 僕たちの会話は、基本的に主義主張の確認や作品の感想、煽り合いでできている。これらは刺激的で頭を使い、内容がループすることもないから、とても面白い。けれど、同時に相手を傷付ける可能性が高いし、否定のし合いにも繋がるだろう。それを面白く感じられ、そのまま楽しめるのは、互いがどれぐらいの知識を持っており、どのようなスタンスで生きているかがわかるような仲でなくてはならない。そして、これらを会話の基本としている人間が、それほどまでに仲を深めることは通常、不可能なのだ。必然的に、僕たちは閉じられたコミュニティだけで話を完結させている。そうでない考え方を持っている人々を狂人だと嘲りながら。なんて、不健康で排他的な考え方なのだろう。