解釈の余地のない夢

 『死』に襲われる夢を見た。

 何を言っているのかよくわからねえが、とにかく、死が実体を持って襲ってくるという夢だった。死は恐ろしく、一定距離以内に近づければ体が腐っていく影のようなものとしてあらわされていた。そして、それが死であるということを、僕は知っていた。

 良くわからない学園みたいなところに僕はいて、それに殺されそうになったところを何とか、自分の教室へと逃れてきたという設定だった。そこで、僕はクラスメートたちに必死に説明する。死が近づいている。それはいずれ、僕たちに追いつき、全てを飲み込んでしまうだろう。早く逃げなければならない。

 そう必死に訴えているのに、皆は僕が狂人であるかのようにしか見てくれない。クラスメートたちは何事もなかったかのように、昼休みを満喫している。半ば、狂ったように訴える自分の様に滑稽さを感じながらも、しかし、自分の感じた恐怖を必死に訴え、狂っているのはそんなに近くに死がいるのに、平然と日常生活を送っているそちらの方だと訴える。仲が良いという設定の5人ほど(具体的な顔や名前はなかった)には、通じるはずだと思い、その人たちだけでもと訴えたのだが、まるで通じなかった。最後に僕は一人で逃げ出した。彼らが死に呑まれることを承知で。そして、目が覚めた。

 とても息苦しく、恐ろしい夢だったから、目が覚めても、しばらく気が抜けていた。

 妻が起きてきたので、僕はこんな夢を見たことを説明した。それは、現実に起きていることで、僕がいつも主張していることの具現化である、ということを言われた。

 言われてみるとその通りだった。僕はいつも、死がこんなにも近くにいるのに、なぜ平然としていられるのか、ということを狂ったように言っている。夢の中でさえ。