「アクタージュ」1~5巻

 前から気になってはいたが、最近、1~2巻が電子書籍でセールをしていたため、まとめて読んだところ、非常に面白かった。どうして、それだけ面白いと思ったのかの理由を書いていこうと思う。

 

 まずは、創作をテーマにしていること。厳密に言えば演技だが、広義の創作には含まれるだろう。この、あくまでも虚構なものに人生を費やす姿というのは、僕にとって憧れと共に共感を呼ぶものであって、無条件に好感度が上がってしまう。作中劇、メタ的な視点も取り入れやすく、名作も多いという印象を抱いてもいる。

 

 次に、絵柄。単純に好み。特に女性の描き方が良くて、演技という難しい題材に対して、表情の撮り方とかがとても良いと思う。

 

 それに物語の構成が巧みで、演技という一見すると地味な題材を上手く少年漫画にしていると思う。特にそれを感じたのが5巻。

 ここまでは普通に読者の感情移入先は演技の天才たる主人公で、その挫折や成長を見ていくという意味合いが強かった。しかし、この巻では主人公はバケモノじみた才能を開花させ、物語を支配していく。僕はこれをホームズ型主人公と呼んでいて、こうなるとむしろ読者の視点としては適さない。あまりにも強力で障害をすぐに克服してしまう、万能の解決機になってしまうからだ。

 しかし、この作品は彼女がその領域に達した瞬間、さりげなく読者の視点が別のキャラクターに向くように仕掛けている。そのキャラは努力型だが才能はなく、作中における天才たちと壁を感じているのだ。どうやったら、主人公たちのいる世界に入り込めるのか、それが出来ない焦燥というところに焦点が合っていく。これならば、読者は感情移入ができるし、どう話が転がるかの予想も出来なくなる。素晴らしい手法だ。

 同時にその手法は漫画や映画といった、視点が物理的なものである媒体の強みだと感じた。小説のような文字媒体は、視点をある程度固定にしなければ、受け手が迷いやすく、それを上手く利用した叙述トリックが存在するほどだ。それがミスリードならばよいが、本当にミスを誘ってしまうことになりかねない。

 視覚的な媒体はそれをさりげなく行えるし、混乱させにくい。漫画の利点を上手く活用していると思う。

 

 あと、さりげなく百合。少年漫画で女性主人公というだけでも珍しいのに、百合文脈で捉えることもできる作品が人気を取れるのが現代的という印象だ。

 

 テーマの取り方も上手いと思う。みんな好きなんだよね、才能の話とか。5巻、というか舞台編は生死をテーマにしていることもあり、個人的に非常に響いてしまった。どうしても、創作とか生死に弱い。

 

 一気読みして、客観的に見られていない部分も多いとは思うが、それだけ気に入ったということで……