温泉に関して

 僕がその昔、「HEARTHSTONE」をやっていた時のことだ。突然、中国語で話しかけられたことがある。当然、僕は英語で自分が日本人であることを表明する。すると、相手も英語で、自分が中国人(台湾人だったかな?)であり、来週、北海道に旅行をするという話をしてきた。なにをするために行くのかと聞いたところ、雪を観に行くのだと言う。そして、自分は日本文化が好きだが、温泉だけは厭だというのだ。僕は、それに激しい同意を覚えた。僕も、物心ついた時から、温泉が嫌いなのだ。

 厳密に言えば、大衆浴場というか、他人とお風呂に入ることが苦手というべきだろう。更に詳しく考えていくと、僕は他の人の裸を見たくないのだという結論に帰着する。皆が水着であれば、忌避感はぬぐえないものの、ここまで拒絶するものではないからだ。

 どうして、他の人の裸を見たくないのか。エロゲー好きの癖に。それは簡単で、僕は他人のことを深く知りすぎることをしたくないんですよね。その人の考え方とか、経験とか、経歴とか、主義思想とか、そういう内面にはかなり興味がある。しかし、その裸の姿とか、性癖とか、そういう秘匿された情報を知りたくないという気持ちが強い。だって、普通に出会った時に、この人は思ったよりも太っていて、ああいう性癖をしているんだなぁとか考えたいですか? 考えたくないですよね。特に仕事関係の人とか、表面上の付き合いしかない人ほど、この気持ちは強くって、会社の人たちで固まって風俗店に行くなんて、僕にとっては正気の沙汰ではなかった。狂ってるんじゃないか? 普通に口を滑らせそうになってしまったぐらいだ。社員旅行も一度だけ行ったけれど、一人だけ露天風呂ではなく、部屋についているシャワーで済ませてしまった。

 どうにも、これはR-18だよ、と伝えられていないのに、そういうものが日常世界に入り込んでいることが嫌らしい。小説でも、そういうシーンが入ってくると嫌になってしまう。特に主人公が絡んでいると余計に。唐辺葉介作品がとても好きな理由にそれがあるんですよね。ある種、不自然なまでに主人公による性的な話はカットされていることが多い。そんな価値観が僕にとっては心地良い。

 全く、子供じみた感性だと、僕自身も思っている。けれど、僕は思ってしまうんだ。そんな醜悪で本質がないものを、わざわざ持ち出す必要がありますか? 現実世界や、創作世界に。