起伏に関して

 妻は幸不幸に敏感で、ちょっとしたことに対して悲喜交々の反応を示してくる。訊けば、それはそれで大変らしい。些細なことで感情を大きく揺らがせられ、それにしばらく支配されてしまうから。制御が効かない人生というわけだ。でも、僕はそれを羨ましく思う。

 僕は鈍感ということもあって、どうにも幸不幸を感じにくい。大切にしているものが少ないからなのだろうか。いや、単純に色々気付かないだけなんだろうな。温泉も食事も苦手だし。なんかそういう脳をしている。

 幸せを多く感じられる人は、きっと、不幸を拾うことも得意なのだろう。でも、それこそが人生じゃないか。そのちょっとしたことに引きずられて、大きく変わってしまう感情や未来こそ、やるべきことの多い道だと言える。ランダム要素のないゲームはすぐに飽きてしまう。変化のない人生はただの作業だ。

 ただ、僕は眩しく思う。その現在の感覚に全てを傾け、一喜一憂する姿が。