不完全なアカシックレコード

 水族館に行った。かなり規模は小さいものだったが、十分に楽しめた。子供連れが多く、飼育員さんも暇そうにしていたので、色々と疑問に思っていたことを質問したりした。

 生物の話は面白い。ただ1種についてだけ聞いても、色々な話が聞ける。一般的に言えば、彼らは進化という名の合理化を遂げているので、何か意味がないように見えるものでも、それが有利なように働く環境だったりする。そういうのが面白く、無限に話を訊けてしまう。

 しかし、それがあの小さい水族館の中だけでも100種近くいるのだ。全ての話を聞ききることなんて出来ない。ましてや、研究ならば。

 水族館や動物園、図書館……僕が好きな場所は同じような共通点を持つ。そこに立った時に、膨大な情報の中にいるような、系統だったあらゆる情報の一端に触れているような、そんな気持ちにさせてくれるのだ。僕は一生のうちで、その一欠片にも満たないようなものだけを知ることができるのだろう。思い出してみれば、それが原初の諦観の記憶かもしれない。図書館に入った時、その全ての本を読み切ることはできないのだという、絶望。全てを取ることはできない。時間は限られている。気力も限られている。上手く使っていきたいものだ。それが上手くいかなくて困っているのだけれど。