体系的な知識と、TIPS的な知識
「新世界より」の話をしている人がいて、あれ、本当につまらないと思うんだよな~と思ったのだけれど、同時に、では、僕がベストラノベに挙げている「MONUMENT」と何が違うの? っていう気持ちにもなってきた。
僕が「新世界より」のことを嫌いなのは、無駄に長くて論点がずれていくとか、ストーリーがガバガバとかいうのもあるのだけれど、知識的なものがぽっと出で使われている印象があるからだ。つまり、遺伝や生物、生殖や進化といった本質的な事象に対する理解が及ばないままに、ハダカデバネズミの染色体の数が~とか、真社会性が~とか、ボノボが~みたいになっていて、なんといえばいいのかな、科学に詳しくない人がちょっとした知識をワンアイデアとして使った作品、という意識だ。でも、それを考えると「MONUMENT」なんてめちゃくちゃ色々な引用があって、衒学的じゃないか、とも思うのだけれど、でも、それがいいとも感じる。
なぜかと言えば、「MONUMENT」の方が徹底的にメジャーじゃない学識を使っているし、体系的に理解しているものから小出しにしていることが理解できる。つまり、ワンアイデアではないのだ。物語を芳醇にするために、筆者の膨大な知識の中から一部が使われている、という感覚がある。「新世界より」みたいな多くの作品においては、ああ、その時に調べたんだな、とか、それだけ知っているのね、とか、そういう印象が否めない。体系的な理解や、背景の理解がなく、そのまま使ってしまっていることがわかってしまうのだ。その浅学さが作品の薄さに繋がってしまうのだろう。
まあ、僕も持っている知識はかなり偏っていて、科学技術全般、特に工学や生物、という感じなので、結果としてSFに関する目が厳しくなっている感じはある。押井守とか、映画撮ってないで、勉強してからやり直せ、って思ってしまうもの。そっち方向じゃない作品に意図せずして、過大評価している、ということはあるかもしれぬ。