意志の強弱

 妻が『僕がどんなにゲームにハマっていても、適切なタイミングで止めて家事などをするのがすごい』という話をしていて、『まあ、それは言うほどハマっていないからであって、むしろ、妻のように寝食を忘れて何かに没頭している方がすごいし、憧れがある』という話で返したのだが、『それは意志が弱いからそうしてしまうのだ』という返答を得た。

 これは、僕にとって驚きの一言であって、でも、納得しうる言葉だった。

 何かに熱中できる人のことを、尊敬している。僕はそうではないからだ。常に時間を気にしているし、目の前の物事には大して集中していない。何か別のことを並行して考えていることがほとんどで、理由があればすぐに止められてしまう。本当に時間を忘れて何かに熱中する、寝食を忘れる、ということは全くない。日々の習慣が自動再生される時になれば、やっている作業は中断される。これは、僕にとって、意志の弱さであるように感じていた。目の前のやりたいことよりも、日々の習慣や明日の予定などを優先して『しまえる』という弱さである。

 しかし、逆の立場から見れば、それは意志の強さであると感じるのか、と納得した。確かに、よくよく考えてみれば、ゾーンに入るような集中をしていて、そちらを止めることができない、というのは意志の弱さ、ということができ、それを止められるのは意志の強さ、ということができる。

 予定通りに何かをやる、ということも、それに価値を感じていれば得意な方で、自分で決めた締め切りを守らない、ということはない。これは意志の弱さであると感じていたが、そうではないのか。目から鱗だった。