「少女☆歌劇 レビュースタァライト」の感想Ⅱ

 劇場版が近づいていたので、「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」のTV版をもう一度、観直していた。たびたび、観たくなる時があって、そのたびに観ているのだけれど、良く出来ているなといつも感心する。

 

 まず、構成が上手い。チュートリアル→純那回(通常のレヴューの説明)→天堂回(初の挫折)→立ち上がり→まひる回→双葉・香子回→ばなな回(前年度と繰り返しの構造の説明)→ひかり回(ロンドンのレヴューと割込みの説明)→ばなな回→クロディーヌ・天堂回(+タッグ戦)→挫折回(死の予感)→クライマックスと上手くまとまっている中で、起伏がある。やはり、キャラクター回とメイン回の織り交ぜ方が上手く、捨て回がほとんどないのが大きいだろう。テンポも良い。おそらく、ベストは10回ぐらいだったかなーとは思うが、ダレるようなことにはなっていない。

 何より、神楽ひかりと大場ななによる二重の大仕掛けが存在する中で、それが骨子ではないという革新的な物語構造が素晴らしい。

 前回バトルロイヤルの敗北者(優勝者も良くある)が参戦している、という構造や、黒幕がその望みでバトルロイヤルを繰り返している、という構造は、それだけで物語が成立するような強力な要素だ。しかし、それは同時に視聴者が見慣れている構造でもある。だから、それを重ねても良い、というアイデアが良い。これは、「君の名は。」で時間差と入れ替わりの両者を重ねている構造に近いと考える。しかも、それは物語的な主軸ではない。あくまでバトルロイヤル的な、奪い合いをどうするのか、というところがメインなので、ギミック的でしかない。だから、ミッドで種明かしをして、一気に畳みかけることができ、最終回までの速度を保っている。

 凡作はこうはならない。上手く考えたつもりの設定を後生大事に抱えることで、それを披露するのは、最終回の手前になる。そして、そのせいで、序中盤の展開が緩慢になるし、披露してからの話の広がりが不十分なまま、物語を終えることになる。

 この、大がかりに思える構造をギミックレベルに抑え、物語の主軸には置かず、序盤や中盤の持ち上がりとして消費する、というのは現代で通用する作品を創るために重要な手法であると感じている。その鏑矢の一つだったのではないか。

 

 テーマもメタ的でもありながら、それが作品に組み込まれているので、違和感も少なく、よくまとまっている。

 オーディションという構造自体が、ある意味でトップ一人のために、残りの人を犠牲にしていると考えることができる。あるいは、歌劇の学校というもの自体が、一握りの才能を輝かすために、他の人を犠牲にしている。(これは「ブルーピリオド」などでも語られるテーマの一つに近い)

 しかし、これに異議を唱えるのが、主人公の愛城華恋だ。なぜならば、彼女の夢が、二人でスタァライトを演じる、二人一緒にトップスタァになる、というものだからである。トップスタァ一人にキラめきを集中させる、というオーディションの理念とは相反する。だから、オーディションの運命を変えるのは、愛城華恋(その理念を再燃させるために神楽ひかりという媒体は必要になるが)ということだ。

 天堂真矢は自分がトップスタァでありたいという矜持を持っているし、西條クロディーヌもそれを乗り越えようとはしているのだが、二人で並び立つことを選んではいない。これは双葉と香子にも言える。純那も、あくまでトップを目指しているだけだし、まひるも、華恋と二人でトップスタァになりたいとは考えていない。大場ななは一人で皆を守ろうとしている。

 そして、ひかりですら、最後の裏切りでわかるように、自身を犠牲にするつもりで、真に二人でトップに立つつもりはない。二人の夢は、叶わないのよ……

 そもそも、このように一人だけが輝けばいいと、その奪い合いこそが美しく、それが観たいと思っているのは、きりんを含めた僕たち観客でもある。バトルロイヤルものは、それ自体が陳腐化するほど使いまわされているのに、本作も含めて非常に人気がある。

 観客が望む限り、舞台は続く。迸るキラめき! それが観たいのです!

 なら、どうすればよいのか。

 その回答が、最終回で明かされる。

 まず、キラめきは再生産できる、ということだ。人間は日々進化しており、キラめきが失われても、それを生み出すことができる。キラめきの再・生・産……

 さらに、奪い合いを観たいと客が思うのならば、互いに奪い合えばよいのだ。そうすれば、キラめきは循環する。失われることはない。奪い合い自体は発生するから、観客も満足する。私の全て、奪ってみせて。

 そういう、相互循環、相互犠牲、それによる自身の革新、再生産がテーマになっているのではないかなーと個人的には思っている。相互ってところがいいよね……

 

 まあ、僕はテーマみたいなところを読み取るのは上手くないし、細かいところまで観れてないと思うが、今のところ、そういう風に思っているというのを劇場版視聴前に残しておきたいと思ったので書いた。