音楽

 音楽が好きなのか? と聞かれることが多かった。おそらく、発売当時から歴代のiPod Classicを愛用していたことや、周囲を気にせずヘッドホンをつけていたからかと思われる。というか、普通に嫌味か。嫌味な気がする。僕はそういうのが察せられない愚鈍な人間なので、ちゃんと言って欲しい。まあ、でも、嫌味ではない文脈でも言われることがあったのだ。確か。そのたびに、『はあ、音楽は聴きますけれど、取り立てて好きとは思わないですが』みたいに適当に返してきたのだけれど、やっぱり、そうなのではないかと考え直しても同じ結論に至った。

 なんというか、世間の皆さんってかなり音楽好きじゃないですか? 音楽のジャンルとか演奏法とかコード進行に詳しいし、楽器の一つ二つ弾けたりする。音を聞いて、何の音かわかる。好きなバンドがいる。バンドがなくとも、フェスに行って一日楽しめたりする。元気が出たり、癒されたりする。僕の場合は、どちらかと言うと暇つぶしなんですよね。

 無音の世界では、情報がなさ過ぎて暇になってしまうというか。日常って、BGMがないから退屈になるんですよ。曲があると何かを考える種になることもあるし。暇つぶしになる。自作のOP考えたりとか。小学生の遊びか? 小学生からずっと続けてるな、これ。もう十分老いているのだが。まあ、だから、音楽そのものというより、音楽によって思い起こさせるなにか、その情報を喰らっているという感じで、音楽が好きとは言えないのではないかと思っている。好きなバンドがいたりもするが、それよりも好きな曲の方が優先される。ごく一部を除けば、ライブで聴く曲よりもCD音源の方が良いなと思ってしまう。誰かに誘われたり、誰かと共に行くのでなければ、ライブに行ったこともない。自分の中での価値はその程度なのだろうなと思ってしまう。

 そう、とにかく退屈なんだ。この世界は退屈だ。いくつも考えて置くことをストックしておかないと、やることがなさすぎて、情報がなさすぎて死にそうになる。この世のほとんどのものは、消閑を目的として存在しているように思える。それを愛してはいるのだが、あくまで、ある一線を越えていないものに思えてしまう。