最近、頭の中が穏やかだ。言葉が渦巻くこともなく、心が平穏でいられる。物事を考えることはできるが、考え込むことはなく、鬱屈した気持ちに巻き込まれることもない。ストレスがなくなっているのだろう。

 健康的なのに、どこか怖いと感じる自分もいる。なんというか、痴呆に近づいているような気がするというように。別に何かを考えている人間が苦悩するわけではなく、苦悩ゆえに考えて込む人間がいるだけだ。必要十分条件ではない。主観的な幸福こそが、生きるための評価主軸だと考えているくせに、そこにいると居心地が悪くなるなんて。いや、違うか。別に幸福というわけではないんだな。無なんだ。ストレスがないというだけで、特段喜ばしいことはない。負がないという状態なんだ。無というのは、死を思わせるから、怖くなってしまうのだろう。痛みが死から遠ざけるための信号であるように、ストレスもまた、生きているがゆえに、死から遠ざけようとするための圧力だ。それがないと、ふと、死んでしまうように思えているのだろう。苦しんでいる方がましだ。死の虚しさと比べれば。